元衆院議員の宮崎謙介氏が足掛け5年の議員生活の経験をもとに、政治家ウオッチングやオフレコ話、政治にまつわる話を適度な塩梅で、わかりやすく「濃口政治評論家」として直言!
安倍前総理の年末年始は落ち着かなかったでしょうね。まあ、ゴーンさんの1年前よりはまだマシでしょうが、桜問題の追及で、冷え冷えな年越しだったのは間違いありません。
そもそも政治家は、年末年始を落ち着いて過ごすことができません。国会が閉じるや、与党は翌年以降の税制改定について議論を始めます。それが終わると、地元に帰って有権者への挨拶回りがスタートしますが、忘年会は最低でも1日3件、多くて10件の集まり(最低2人、最高で約200人の会)に顔を出します。僕は議員時代、それこそ10件の忘年会をハシゴして返杯の数、およそ100。急性アルコール中毒でぶっ倒れ、救急車で運ばれましたが、無事だったおかげでこの原稿を書いています。
先般問題になった菅総理の有名人「密」会もそのひとつです。銀座のステーキ屋で二階幹事長や王貞治、みのもんた、杉良太郎‥‥という8人ほどの面々で会食したとか。杉さんは二階幹事長のパーティーでよく余興を披露していますので「次回、パーティーではまた歌ってくださいよ」と、王さんやみのさんには「また司会をよろしく」という意味も込められていたのでしょうか。ちなみに、菅総理はお酒を飲めないので30分で退席、と報道にも出ておりましたが、同じくさほど飲まない安倍前総理とは違う残念な点がひとつ。お酒を飲めない代わりを担っていた、岸田さんのようなパートナーがいないこと。二階幹事長も会食ではせいぜい1杯しか飲まない派なのですから。
そんなお酒が飲めない下戸の政治家たちは、ふるって消防団の年末警戒や地元の初詣に足を運びます。元日に鳥居の脇に立ち、自分の選挙ポスターを掲げてアピールをするわけですが、僕は恥ずかしさを押し殺してやりました‥‥。
それと、僕はよく餅つきに参加しました。めかしこんだ一張羅のスーツが、飛び跳ねた餅でベタベタ。大事な一着がダメになったことは忘れられません。そうやって議員たちの年末年始は体力的には苦しく(聞くかぎりでは楽しく)終わっていきますので、休まる時はありません。
とはいえ、今はコロナ禍です。大人数の忘年会は見送るようにというお達しがありますので、昼から少人数の会へ、ひっきりなしに顔を出す動きが主流となるでしょうね。
そうそう。議員を辞職した翌年、それまで家族とゆっくり過ごせなかった宮崎家は思いっ切りクリスマスに贅沢してやろうと、東京の溜池山王にある「ロウリーズ・ザ・プライムリブ」の個室を予約して食事を楽しみました。
ふと、個室からホールに視線を向けると、大テーブルに白いマフラーを首にかけてダランと垂らしているゴッドファーザーを発見!!なんと、麻生副総理が15名ほどのブルジョワ団体の中心におり、黒光りするコートに白いマフラー姿で赤ワインをくるくると回していたのです。僕らが地元のスナックやおでん屋をはいずり回ってビールを飲んでいる間、麻生さんはオーパスワンなんてギャングな。うらやましい。
菅総理の有名人「密」会、真摯に反省なんてしてませんよ。むしろ議員たちが羨望の目を向けることが(二階幹事長や菅総理を)増長させるんです。
宮崎謙介(みやざき・けんすけ):1981年生まれ、東京出身。早稲田大学を卒業後、日本生命などを経て、12年に衆議院議員に。16年に辞職し、経営コンサルタントや「サンデー・ジャポン」(TBS系)などに出演。「バラいろダンディ」(TOKYO MX)ではレギュラーMCを務める。