元衆院議員の宮崎謙介氏が足掛け5年の議員生活の経験をもとに、政治家ウオッチングやオフレコ話、政治にまつわる話を適度な塩梅で、わかりやすく「濃口政治評論家」として直言!
後藤田正純議員と自民党徳島県連の身内バトルの問題、「身内すぎて、どーでもいいでしょ!」との声が上がる反面、スルーできない盲点があります。
まず自民党徳島県連の山口俊一会長が党本部を訪れて、次期衆院選での後藤田議員の非公認を求める申し入れ書を提出。県議会自民党24人みんなの署名があったというのですが、発端は後藤田議員のSNS上の発言でした。飯泉嘉門県知事と県議会議員を「ズブズブの関係、なれ合いすぎて責務を果たしていない」などと批判。それに怒った県議会衆が、党本部に後藤田氏の非公認を嘆願します。記者会見まで開く大事になりましたが、その実、この全員署名を、自民党の中央政権があっさり却下したことが問題でした。これこそ、自民党の「中央と地方のバランスの差」です。
そもそも現職の議員に対して、地元が満場一致で「次は公認しないで下さいよ」「いや、公認します」などというやりとりは、これまで聞いたことがありません。後藤田さんといえば「カミソリ後藤田」の異名を取る後藤田正晴元副総理の血筋。週刊誌でスキャンダルを取り沙汰されたことがありましたが、事実がハッキリしないものでしょう(東日本大震災における不倫報道、結婚詐欺による訴訟報道)。しかも10年も前のことを蒸し返すようなことも。僕のように「育休政策を推進していた議員が女性スキャンダルとは何ごとだ!」とやられ、なおかつテレビにまで報道されるケースとは異なります。コロナ禍の緊急事態宣言中に女性と飲み歩いた、となったらもうアウトでしょうが、誰も突っ込めないゴシップで現職の公認を引き下げることはありません。
議員時代の僕が接した後藤田さんは、白黒ハッキリさせる男らしいところがありました。おかしいことには率先して切り込んでいく真っ向勝負タイプで、地元での人気も高い。ある日、労働組合が自民党にヒアリングに来た際も、非協力的な組合に対して逡巡せずに闘っていました。だからこその性格が仇になったのかもしれませんが、地元の議員との軋轢は大きくなっているようです。
面白くないと感じている地方議員が反旗を翻した結果の署名運動。結局、自民党は公認すると表明したわけですが、僕はこの発表までに「県連の言い分と後藤田さんの言い分を検証する議論がなされたのか」に疑問を感じています。
まず自民党本部は、徳島県会議員が満場一致で非公認にしてほしい、と進言してきたことをもっと重く捉えるべき。コトを大きくしたくないにせよ、地方の声をもっと時間をかけて吸い上げる調査は必要でした。自民党中央は、鶴の一声で「公認します」とピシャリと片付けましたが、自民幹部はそうやってうまく地方をねじ伏せたつもりなのでしょうか(後藤田さんのことは大好きですが)。
一方で、ワクチン接種がなかなか進まない現実、これは中央政権の力が地方で弱まっているゆえ。河野大臣が「地方よ、打ち手もオペレーションもさっさと確保して、こういうふうにやりなさい」と命じることができない、というねじれも見えます。
大叔父の「カミソリ」まで切れ味はよくないにせよ、後藤田議員は地道に切りつけ続けてほしい‥‥。
宮崎謙介(みやざき・けんすけ):1981年生まれ、東京出身。早稲田大学を卒業後、日本生命などを経て、12年に衆議院議員に。16年に辞職し、経営コンサルタントや「サンデー・ジャポン」(TBS系)などに出演。「バラいろダンディ」(TOKYO MX)ではレギュラーMCを務める。