ハリボテ偽装大国は、ボロボロに朽ち、バラバラに──。習近平体制発足から1年が経過した中国は、瓦解秒読み段階。PM2.5をはじめとする環境汚染問題や、バブル崩壊で疲弊し切っているうえに、ここに来て多数派の漢族に弾圧され続けた少数民族の業火のごとき怨みと怒りが武装蜂起レベルまで高まっているという。虐げられた彼らの肉声も交え、大国の落日現場を総力取材した!
中国が1つなんて「大ウソ」なのだという。出身地により文化も言語も異なり当然考え方も違う。そして多数を占める漢族は、これまで少数民族を弾圧してきた。共産党の圧政により、抜き差しならぬ「弱者」の憤懣〈ふんまん〉が今、中国全土を覆い尽くしているのだ。
「同じ中国人といっても出身地によって考え方はまるで違います。例えば、北京人は『政治』が生活の基盤にある。朝から晩まで政治を語る人がいるが、上海人は政治には無関心。スマートで、彼らの関心は海外にある。そして、広東人は『儲かりまっか』と言うのが挨拶になるほど、おカネの話が好きです。日本人は中国を十把一からげにしてしまうけれど、そうではないんです」
こう語るのは先頃「出身地を知らなければ、中国人は分らない」(ワック)を上梓した、中国通の評論家・宮崎正弘氏だ。
このような地域性に加えて、中国で70年代末に実施された「一人っ子政策」の時代に生まれた世代が加わり、状況は複雑化したという。
「例えば、最近、大阪で増水する川に飛び込んで子供を助けた上海人がいました。一昔前なら『助けたらいくらくれる?』と溺れる人と交渉するのが一般的な中国人でした。しかし、救助に当たった若者は一人っ子でテレビで育った世代。目は海外を見ているので多少の正義感を持っているのでしょう」(宮崎氏)
そんな多民族国家とも言える中国で今、政府の少数民族への弾圧に関心が注がれている。
北京の天安門への特攻炎上事件によって、新疆ウイグル自治区での中国政府の圧政が明るみに出た。
宮崎氏が言う。
「もともと新疆ウイグル自治区の東トルキスタンはトルコの国という意味です。彼らは粗野な面があるものの、アラーの神を信じるイスラム教徒です。それなのに毛沢東の時代、スターリンの強制移住政策にならって、満州族を中国東北部からウイグル自治区の辺境に集団で入植させた」
この時、満州族はもともとの土地で持っていた仕事を奪われる形となった。その後、ウイグル自治区には漢族の入植が進み、今やウイグル自治区の人口の40%は漢族になっている。
ウイグル自治区は地下資源の宝庫。それを漢族が独占しているばかりか、習近平指導部発足1年の今、先祖代々続く墓地の取り壊しを迫るなど、中国政府は文化や慣習を否定する政策に出ている。中国政府に対するウイグル族の反発が強まるのは当然なのだ。
外信部記者が語る。
「地元政府は墓地を取り壊し、漢族の企業が320億円を投じてショッピングセンターやホテルを建設する計画なんですよ。これに対して、10月には1000人を超えるウイグル族住民が抗議集会を開いた。地元では今も緊迫した空気が流れています」
露骨な漢族優遇、少数民族差別政策は、およそ共産主義国家とは思えない所業。新疆ウイグル自治区では漢族とウイグル族が一触即発の事態となっているのだ。