夏競馬はすでに始まっているが、春競馬の掉尾を飾るケジメの一戦、宝塚記念が今週のメイン。有馬記念同様、ファン投票によって出走馬が選出される春のグランプリで、毎年、熱戦が繰り広げられる見応え満点のビッグレースだ。
ただ今年は、登録馬が15頭とフルゲート(16頭)割れ。少しばかり寂しいが、昨年の同レース、年末の有馬記念とグランプリを連勝中のクロノジェネシスを筆頭に、無敗で大阪杯を制して文字どおり女傑として君臨することになったレイパパレ、GI戦で常に上位争いを演じ続けているカレンブーケドールと、今の世を反映してか、今年の主役は“女性軍”である。
これら女丈夫に立ち向かうのが、春の天皇賞で2番人気に支持されたアリストテレス、昨年の2、3着馬キセキ、モズベッロといったところ。そのキセキが3歳時に菊花賞を制しているとはいえ、牡馬勢のGI実績はやや劣り、馬券的には少し興味を削がれるかもしれない。
まずはデータをひもといてみよう。馬単導入後の過去18年間、馬単による万馬券は6回(馬連は3回)。3分の1の割合で波乱決着となっているように、1番人気馬が4勝(2着5回)、2番人気馬は3勝(2着2回)で、1、2番人気馬によるワンツー決着は、わずか1回のみ。この数字が示すとおり、人気どおり簡単に決まりにくいGI戦と言っていいだろう。
主役は牝馬と書いたが、過去18年間で26頭出走しており、4勝(2着3回)。出走頭数を思えば、明らかに“女恐るべし”である。
ちなみに勝ったのは05年スイープトウショウ、16年マリアライト、19年リスグラシュー、20年クロノジェネシス。近5年のうち3年で牝馬が勝利を収めているのだから、前記した3頭とも侮れない存在だ。
年齢的には4、5歳馬が圧倒している。4歳馬が8勝、2着4回(うち牝馬が2勝、2着1回)、5歳馬が7勝、2着8回(牝馬2勝、2着2回)。勢いに乗る4、5歳馬の軽視は禁物ということになり、出走頭数を考えれば、伸びしろ十分の4歳馬に分があるとみてよさそうだ。
ということで、4歳馬のアリストテレスを主役に推したい。
昨年の菊花賞で、無敗の三冠馬に輝いたコントレイルとクビ差2着の死闘を演じて名を成したが、前々走の阪神大賞典で惨敗(7着)を喫した。それが唯一の汚点として残るが、敗因は何だったのか。
道悪(重馬場)も影響したとは思うが、当日、やや落ち着きを欠いていたことから、3カ月ぶりのAJCCを勝った反動、つまり2走目のポカ(2走ボケ)だったとみている。
いずれにしてもテンションが妙に高く、本来の姿になかった。昨秋の疲労が蓄積していたこともあり、いろいろ体調面で問題があったのだろう。続く前走の天皇賞・春は、なんとか差のない4着と頑張り、力のあるところを見せてくれた。
心身ともにたくましくなりつつあることは間違いなく、この中間はいたって元気。ここを目標にしっかり乗り込まれ、稽古内容はホレボレするばかり。今年に入って最もいい状態であることがうかがい知れる。
血統的にはヴィクトリー(皐月賞)、フサイチコンコルド(ダービー)など近親、一族に活躍馬がズラリと居並ぶ良血であることは知られるところ。良馬場がベストだが、稍重までなら問題はない。
まだこれからの馬で、スター候補であることを思えば、ここで一気に素質を開花させ、大ブレイクを果たしてくれることを期待したい。