被災地を取材し続けるジャーナリストの村上和巳氏が語る。
「岩手、宮城では巨大津波に襲われ、多くの方が命を落としました。震災当初、火葬場が満杯で土葬したものの、2カ月後には腐乱状態で体液が滴るビニール袋入りの遺体を納めた棺を、不憫さのあまりに家族が掘り起こしてしまうなどの問題が発生しましたが、今は解決しています。しかし、震災当時、夫の親である祖父母が預かっていた子供が犠牲になると、夫に対して『あなたの親に子供を預けるんじゃなかった』と妻がトラウマを引きずってしまうケースもあるそうです」
深刻な家庭不和を抱える人も少なくないようだ。
「最も悲惨だったのは児童、教職員84名の犠牲を出した石巻市の大川小学校のケース。大川小学校では、よりによって津波が来るかもしれないというのに学校で点呼を取っていた。学校側のやり方に従順に従っていた児童が犠牲になりましたが、中には母親が子供の手を引っ張って逃げて助かった児童もいる。迎えに行った母親に、どうしてそうしなかったんだ、と夫と揉めるケースもあるようです」(地元記者)
平時でも人々を借金地獄に導く「闇金」も被災地には跋扈したというが、現地の闇経済事情を取材したジャーナリストの窪田順生氏が言う。
「正規の金融機関が融資をしてくれなかった三陸の被災地で唯一、金を貸してくれるのは闇金だった。それで当初、被災地には闇金が大挙して入ったが、しばらくすると撤退が相次ぎました。借りるといってもほとんどが1万~2万円だからです。しかも、大半は給料日までの生活費。賠償金が支給されれば返済するが、利息をつけても数千円単位なんです。今は信金も従業員数人であれば融資してくれるようになりましたが、例えば1人でスナックや居酒屋をやっている個人が融資を受けるのは難しい。そういう事業の資金か生活費かわからないような金は、今も闇金で借りるしかないようですが‥‥」
しかし、中には被災地に根づき、利益を上げている闇金業者もいる。
「それは無担保で事業者向け融資を行っている業者ですよ。主として被災地の建築・産廃関係の業者に、運転資金を融資した。現場で使う重機や機材までも提供したといいます」(前出と別の地元記者)
絶体絶命のピンチの時に無担保で融資してくれたという強い信頼関係が、闇金業者と借り手との間に生まれ、確実な回収をもたらしているというのだ。
もちろん、彼ら闇金業者が年間数千%の高利で融資していることには変わりはなく、いずれ債務者に対し牙を剥くケースも出てくるだろう。復興庁の発表する数字の裏には、混迷の終わりが見えない現実があることを忘れてはならない。