セ・リーグ連覇を果たした巨人が、今季3位に躍進した広島から先発ローテの強奪に成功した。同一リーグのパワーバランスが大きく崩れる事態かと思いきや、ここから始まるのは大逆襲だ。西から聞こえてきたのは、球界の盟主をあざ笑う“見返し”シナリオである。
11月25日、広島からFA宣言していた大竹寛(30)が巨人入りを表明した。
巨人の提示した推定年俸3年5億円という条件提示は、ソフトバンクの4年7億円を下回るようだが、埼玉出身の「在京志向」と原辰徳監督(55)の熱意がそれを上回ったと見られている。
強奪された野村謙二郎監督(47)率いる広島は今季、16年ぶりのAクラス入りを果たし、来季はさらなる飛躍を目指す年だ。大竹の離脱は痛いはずだが、スポーツ紙デスクはこう語る。
「大竹は2010年に右肩を故障して以降、治っているのにいまだに神経質なんです。チームはエースの前田健太(25)でさえ、登板する時は中4日でも行かせる体制なのに、大竹は少しでも違和感があればすぐに自己申告してくる。だから今季、4人の2桁勝利投手を出しましたが、唯一、貯金ゼロの大竹に対する評価は単年で推定1億4000万円だった。それが嫌なら出ていっていいよということだったようです。大竹が抜けた穴は150キロの豪腕ルーキー・大瀬良大地(22)で埋まると見ています」
広島はすでに大竹を見限っていたようだが、迎え入れる巨人内部からさえ不安を口にする声が上がっているという。
「過去のFA選手の失敗もあり、プレッシャーとの戦いも心配なんでしょう。『何だかんだ言っても大竹は今年、10勝10敗のピッチャーだからな。第2の門倉になるんじゃないか』という声が聞かれましたね」(球界関係者)
06年オフ、巨人はFAで当時の横浜から10勝9敗という成績の門倉健(40)を2年推定2億円で獲得したが、2年でたった1勝しかあげられない“大ハズレ”だったばかりか、人的補償で工藤公康(50)を吸い上げられ、敵に勢いをつける形となったのだ(07年の横浜は前年最下位から「借金1」の4位へと上昇)。
大竹強奪が当時の再現となれば目も当てられない。
大竹が巨人で大誤算、広島が人的補償で獲得した選手の活躍で首位争いを演じる──。ただでさえ、FAで巨人や阪神に選手の“草刈り場”とされてきた広島が、仁義なき“倍返し”をすれば、ファンは痛快だろう。
そこで気になるのが、巨人の「プロテクト選手」だ。広島は巨人が事前に28名の選手をプロテクトしたリスト外からしか人的補償選手を選べない。とはいえ、先発ローテを奪われたのだから、まずは単純に先発奪い返しを狙いそうだが。
「プロテクトを外れ、なおかつ先発ができそうな投手となると、昨年、中継ぎで50試合に登板し防御率1.61を記録している福田聡志(30)がおもしろいですね。また、来季に右肘手術から2年ぶりの復活をかける抑え候補の久保裕也(33)も必死で調整を続けており、“ケガ人扱い”で枠から外れたら狙う価値はある」(スポーツライター)
左投手不足が広島の懸案事項だが、そこに思わぬ大物の名前も浮上する可能性があるという。
「4年推定20億円という大型契約で、来年3年目を迎える杉内俊哉(33)です。日本シリーズでも戦犯となりましたが、一部フロントからは『ここまでできないとは思わなかった』と半ば“不良債権”扱いとなっている。広島はヤンキースの黒田博樹(38)に3億円でラブコールを送っているので、杉内に5億円出すとは思えませんが、広島のフトコロ事情を見越して巨人が杉内を外す賭けに出たら、無理をしてでも獲りにいく可能性は十分にある」(前出・球界関係者)