芸能

日本レコード大賞 炎の四番勝負!<第3回>「1980年~五木ひろしVS八代亜紀~」(3)

20131219h

 良美は新人賞部門に、八代は大賞部門にノミネートを重ねるうち、思いがけない現象が起きた。会場にはアイドルたちの親衛隊がしのぎを削るが、良美のファンにとって聖子や田原は敵でも、八代は「応援すべきお姉さん」である。

「私のファンの人たちが、八代さんの曲のサビの『雨雨降れ降れ、もっと降れ』を合唱するようになったんですよ。八代さんも野太い声援にニッコリと喜んでいらっしゃいました」

 そしてその光景は、八代の手を振りかざすポーズとともに歌番組の花形となっていく。ささいなきっかけは、しかし、大輪の花へと結びつくのである。

 そんな八代の「雨の慕情」(80年4月)もまた、五木と同じく“三部作”に数えられた。作詞・阿久悠、作曲・浜圭介、編曲・竜崎孝路というトリオで、前年の「舟唄」(79年5月)に続く第2弾である。

 詞を書いた阿久悠は「舟唄」~「雨の慕情」と来て、第3弾の「港町絶唱」(80年9月)でレコード大賞を獲るというプランを描いていた。ではあるが、候補曲となったのは1つ前の「雨の慕情」である。

 五木陣営の軍師であるひのきは、そこが勝負の大きな分かれ目だったと後に気づいた。

「賞レースが始まって、マスコミや評論家に『どの曲でエントリーするの?』って聞かれる。ウチは三部作の締めくくりとして『ふたりの夜明け』を持っていった。レコード売上げも、曲のクオリティも十分に勝負できると思ったんです」

 当然、八代陣営も「港町絶唱」で来るはずと読んでいた。9月発売というタイミングは暮れに向けて披露する機会も多く、選考には有利となる。ところが、あえて「雨の慕情」に戻ったのはなぜか?

「レコード大賞というのはセールスや芸術性だけじゃない。そこには“仕掛け”という部分も大きく作用する。五木のほうがレコードは売れていたけど、印象としては『雨雨降れ降れ、もっと降れ』の大合唱のほうが強かった」

 ひのきは、八代陣営に倣うわけではないが、ラテン歌謡の「倖せさがして」のほうがレース向きだったのではないか‥‥と、わずかに後悔した。勝てると思ったレースに勝てなかったことは、五木を中心とした陣営に「何が何でも!」との気持ちを覚醒させる。

 それが84年の「長良川艶歌」で結実し、2度目の戴冠となった。この歌の作曲は「ふたりの夜明け」と同じ岡千秋だが、勝利の美酒は不思議な味だった。

「今回はうれし涙で、また飲んでも飲んでも酔えないって感じでしたね」

 こうした激戦は、昭和の終わりまで重ねられ、人々の記憶に植えつけられていった‥‥。

カテゴリー: 芸能   タグ: , , , , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    デキる既婚者は使ってる「Cuddle(カドル)-既婚者専用マッチングアプリ」で異性の相談相手をつくるワザ

    Sponsored

    30〜40代、既婚。会社でも肩書が付き、責任のある仕事を担うようになった。周囲からは「落ち着いた」なんて言われる年頃だが、順調に見える既婚者ほど、仕事のプレッシャーや人間関係のストレスを感じながら、発散の場がないまま毎日を過ごしてはいないだ…

    カテゴリー: 特集|タグ: , |

    これから人気急上昇する旅行先は「カンボジア・シェムリアップ」コスパ抜群の現地事情

    2025年の旅行者の動向を予測した「トラベルトレンドレポート2025」を、世界の航空券やホテルなどを比較検索するスカイスキャナージャパン(東京都港区)が発表した。同社が保有する膨大な検索データと、日本人1000人を含む世界2万人を対象にした…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , |

    コレクター急増で価格高騰「セ・パ12球団プロ野球トミカ」は「つば九郎」が希少だった

    大谷翔平が「40-40」の偉業を達成してから、しばらくが経ちました。メジャーリーグで1シーズン中に40本塁打、40盗塁を達成したのは史上5人目の快挙とのこと、特に野球に詳しくない私のような人間でも、凄いことだというのはわかります。ところで、…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , |

注目キーワード

人気記事

1
長与千種がカミングアウト「恋愛禁止」を破ったクラッシュ・ギャルズ時代「夜のリング外試合」の相手
2
日本と同じ「ずんぐり体型」アルプス山脈地帯に潜む「ヨーロッパ版ツチノコ」は猛毒を吐く
3
沖縄・那覇「夜の観光産業」に「深刻異変」せんべろ居酒屋に駆逐されたホステスの嘆き
4
段ボール箱に「Ohtani」…メジャーリーグMVP発表前に「疑惑の写真」流出の「ダメだ、こりゃ!」
5
巨人が手ぐすね引いて待つ阪神FA大山悠輔が「ファン感謝デー」に登場する「強心臓」