歳を取ると時が過ぎるのを早く感じるが、確かにコロナ禍で右往左往しているうちに、もう9月か、という思いにかられる。オリンピックもあって、まさに喧噪の中で慌ただしく夏は過ぎ去ってしまったが、競馬も衣替え。迫り来るGI戦線を控えて、衣装は彩り豊かになる。
中央場所はローカルから中山と中京に移る。その中山での秋競馬第一弾は、恒例の京成杯オータムハンデ。枠順に左右されることが少なくない芝マイルのハンデ戦で、荒れるイメージがつきまとう重賞だ。
しかし大波乱の連続なのか、というとそうでもない。02年に馬単が導入されて以降、これまでの19年間、その馬単での万馬券は5回(馬連は4回)。この間、1番人気馬は4勝(2着0回)、2番人気馬は6勝(2着1回)で、1、2番人気馬によるワンツー決着は0回。人気どおり簡単に決まらないことは確かで、荒れる時は極端に荒れる、つかみどころのない重賞と言えるだろう。
その理由はハンデ戦であることに加えて、コース形態も影響している。周知のように中山の芝マイル戦は、2コーナーのポケットからのスタート。ゲートを出て加速がつくところで最初のコーナーに出くわす。おむすび型の変型コースのため、外枠の馬は他馬にハジかれたり、みずから膨れたりして、コースロスや不利を被ることがしばしばある。公正さを欠くという理由で、同コースで行われていたGI朝日杯FSが、14年から阪神競馬場に移ったのはご承知のとおり。なので枠順が勝負のカギを握っていることは否めない。
というわけでデータも示すとおり、人気どおりに決まり難い重賞であることは頭に入れておこう。
年齢的には5歳馬が圧倒的な強さをみせており、過去19年間で半数以上の10勝(2着8回)もあげている。また、残暑の中でもあり、暑さに強い牝馬の頑張りも目立っている。出走頭数が少ないわりに4歳馬が2勝(2着1回)、5歳馬は3勝(2着3回)という具合だ。
今年の顔ぶれを見ると、個性派ぞろいでフルゲート(16頭)必至。なんともつかみづらいが、同じような実績なら牡馬に比べて2キロ斤量が軽くなるのが相場の牝馬に目が向いてしまう。中でも穴党として狙ってみたいのは、アカノニジュウイチだ。
目下2連勝中。ともに6ハロン戦で、馬自身がスプリント向きになっているのは否めない。ただ、名手・横山典騎手の進言もあり、マイルでも力は出せるとみて臨んできている。
実際、新馬戦を勝ったあと、休み明けのクイーンC(東京芝1600メートル)で差のない4着、続く東京芝1800メートルのスイートピーSでは、見せ場たっぷりの3着に好走している。
厩舎スタッフも「折り合いに難はない。自分の競馬に徹すれば大丈夫。問題はない」と、距離の不安を払拭する。であるなら勝負になっていい。
前走後は短期放牧でリフレッシュされ、ここを目標にしっかりと調整されている。1週前の追い切りもリズミカルで伸びやかだった。力を出せる状態にあることは間違いなさそうだ。
ハンデは恐らく53キロ。牝馬で昇級初戦であることを思えば、前走から3キロ減の52キロでの出走ということも十分考えられる。
強烈な決め手が身上で、いかにも中山のマイル戦は合いそう。真ん中より内めの枠に入ること、そして良馬場を条件に大きく狙ってみたい。
相手として注目するのも牝馬で、スマートリアンとシャインガーネットだ。
前者は相手なりに走る安定味があり、マイル戦は〈2 3 1 1〉と得意にしている。後者は4カ月ぶりの実戦で近3走は芝1400メートル戦だが、勝ち鞍3勝のうち2勝をマイル戦であげている。仕上がりいかんでは大勢逆転があっていい。