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東京・新橋で焼鳥屋を経営しています。カウンター15席、テーブル席が10席の中箱で、スタッフも常時6名。今は緊急事態宣言中なのでお酒を出さず、夜8時までの営業です。目と鼻の先にはお酒を出している居酒屋が4軒あり、いつも満席。当然ながら、このままでは潰れるのを待つばかりの状態に陥っています。
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コロナ禍での飲食の問題、まだまだ解決するまで道のりは遠そうですよね。本当に気の毒です。先日、僕の知り合いの飲食店経営者が「こないだ、近くで大事件が起こったんです」と電話をしてきました。曰く、
「お酒を出して営業しているスナックがあるのですが、その営業中に近くのスナックのママが怒鳴り込んできて『アンタずるい。協力金をもらいながらお酒まで出して!』と、大騒ぎして大変だったんだよ」
お酒アリで営業している側からすれば、
「じゃあ、アンタもお酒を出して営業しなさいよ。こっちは従業員を抱えてんだから、必死なんだよ」
罰金覚悟の上でやっている。一方、お酒自粛側は、
「自分のお店でコロナが広がっちゃったら、どうすんのよ。責任問題!」
という心配があり、やっぱり1日約4万円の支援金でまかなっているということなのです。
こうした例は数多くあり、お酒アリの営業をすると、やはりお客さんが入るため、それに対するやっかみとも受け取れる批判が渦巻いています。このままでは飲食店格差が激しくなってしまう。休業協力金や支援金をもらって悠々としている小さな個人店もある中、中規模~大型店舗はバタバタと潰れていっているのが現状。じゃあ、やっちゃえよ‥‥というわけにもいかず、先の飲食店経営者の知人は、
「そうなんです。都の要請を無視してお酒を解禁することもできず、かといって支援金をもらわずに営業する勇気もなく。実際、クラスターが発生するのも怖いです‥‥」
この夏のコロナ爆発の一番の原因は、家庭内感染です。2番目が職場で、3番目が飲食関係。この飲食関係にはお酒を出す店だけでなく、カフェやレストランでお茶する大人数の会合も含まれています。やっぱりお酒との重大な関係は乏しいのでは、ということで、そろそろお酒を解禁するべきではないのか。そんなことを新橋の焼鳥屋さんの代わりに、与党の中堅議員に訴えてみました。すると、
「コロナの状況がよくならない限りは、飲食店への厳しい施策は続くだろうね。よっぽどその職業に思いがなければ、違う業態に変えて、状況がよくなったらまたお酒アリの飲食を始めたらどうだろうか」
打開策が「いったん店をやめろ」とは、なんたることか。そういえば昨年の緊急事態宣言の際、飲食店を経営する、はるな愛さんがテレビで言っていました。
「休業要請下での営業方針は飲食店ごとに異なって、コロナが収まった時には飲食店業界で分断が起きそうな感じがする」
スナックのママの修羅場もそれこそ、分断の極み。政治家よりも個人の経営者の意見がごもっとも、悲しい世の中です。
宮崎謙介(みやざき・けんすけ)◆1981年生まれ。早稲田大学商学部を卒業後、日本生命などを経て12年に衆院議員に(京都3区)。16年に議員辞職後は、経営コンサルタント、テレビコメンテイターなどで活動。近著に「国会議員を経験して学んだ実生活に即活かせる政治利用の件。」(徳間書店)。