これを後押しするようにバックアップ役を担ったのが、現在は調教師となっているかつての騎手仲間だった。競馬ライター・兜志郎氏が解説する。
「角田晃一師(43)、松永幹夫師(46)などが、みずからが管理する社台生産馬を武に回しているのです。落馬して不調に陥った時から武のことを気にしていたようですから」
角田厩舎では例えば、アントニオピサで9月29日、10月14日の条件戦に出走している。松永厩舎にいたっては、クレアドール(11月23日)、イリュミナンス(4月21日、6月8日、11月17日)、フェルメッツァ(7月20日、10月26日)、カーヴィシャス(8月17日、9月28日)、サダムサロペット(4月20日)、レッドアモーレ(3月23日、4月6日)、アルディエス(3月24日)・・・・といった具合なのである。
こうした“裏工作”も奏功し、社台との「復縁」「手打ち」に至った──。
馬産地関係者は言う。
「実は社台は、武が不調の時から手腕、つまり能力そのものは認めていました。今は(社台お気に入りの)岩田康誠(39)が乗れていないので、ジャパンカップ(GI・11月24日)に出走したジェンティルドンナあたりなら岩田でも勝てるのに、あえて降ろして外国人(ムーア)に乗り替わった。そんな感じですから、武に対しても一時のヘンな感情は消え、合う馬は回すということになっています」
ジャパンカップダート(GI)が行われた12月1日、ホテルニューオータニ大阪で、恒例の社台グループのパーティが催された。パーティ関係者が明かす。
「これは会員の集いでもあり、競馬関係者や馬主、騎手らも参加します。騎手全員が壇上に上がり、騎手を代表して挨拶をしたのは武でした。『GI100勝の武豊です』との自己紹介でツカミはOK。続けて『今日は社台さんのパーティということで、空気を読んで2着にしました』と言って笑いを取っていましたよ」
ジャパンカップダートで、武はワンダーアキュートに騎乗して2着。1着は社台レースホース所有のベルシャザールだった。
「来年は(社台からの騎乗依頼は)もっと増えるでしょうね。例えば、社台御用達の騎手がケガでもした時には、武に回ってくる可能性もあると思いますよ」(トラックマン)
天才に強い馬が回ってくれば、結果が出るのは明らかだろう。