今年の競馬では、昨年75勝でリーディング12位にとどまった武豊に注目している。サポート体制がこれまで以上に整っており、勝ち鞍を増やせそうだからだ。
サポートの一つ目は、懇意にしている馬主・松島正昭氏が昨秋にクラブ馬主「インゼルサラブレッドクラブ」をスタートさせたこと。そこでは今年デビュー予定の馬が21頭募集されたが、良血馬揃いということもあってほとんど満口となっている。その全馬に武が乗ることはないが、評判の高い馬は彼が乗ることになるだろう。
「松島氏は、個人馬主としては朝日杯FS(GI)を勝ったドウデュースを持っていて、武豊騎乗でダービーを目指しています。それが終わるとすぐに新馬戦が始まりますが、そこでは個人で持っている馬とクラブ馬との2本立てで、武豊をサポートしていくはず。預ける厩舎も友道厩舎を始めトップトレーナーばかりですから、勝ち星は増えていくでしょうね」(競馬専門紙・トラックマンA氏)
二つ目は、実弟の武幸四郎厩舎が、右肩上がりの成績であること。19年14勝⇒20年28勝⇒21年34勝と、勝利数を伸ばしているのだ。昨年は武豊のこの厩舎での勝利数は6勝だったが、いまの厩舎の勢いからすると今年はそれ以上になることは確実だろう。厩舎のメーン馬主はメイショウの松本好雄氏だが、武はそこの主戦騎手の中の一人だ。
三つ目は、同期の蛯名正義が3月から調教師としてデビューすること。現在は2月末で引退する藤澤和雄調教師の下で技術調教師として修業中だが、2カ月後にはそこの馬房を引き継ぐと言われている。もちろん、スタッフも一緒に。日本一の調教師のノウハウをそのまま生かせるのだから、蛯名への期待は大きい。
「蛯名正義と武豊は競馬学校時代から仲が良く、信頼関係を結んでいる。調教師試験に受かった時にも、『自分の厩舎の馬に、豊にもぜひ乗ってもらいたい』と語っていたほどだ。幸い、蛯名の仲人だった社台ファーム・吉田照哉氏の協力もあって、馬のほうは順調に集まっている。夏ごろには蛯名厩舎の馬に豊が乗っているかもしれない」(前出・A氏)
サポート体制とは異なるが、コロナ禍が収束していないこともプラスとなるだろう。昨秋に来日して猛威を振るったC・デムーロは短期免許期間が終わり先だって帰国したが、新たに来日する外国人騎手は夏のワールドオールスタージョッキーズまでいないようだ。そのぶん、武豊にも有力馬が回ってくる。
ケガなどしなければリーディングの上位争いをするだろう。大逆襲が見られそうだ。
(競馬ライター・兜志郎)