五輪担当記者が明かす。
「ヨナは腰痛の持病を持っており、06─07シーズンは、それが原因で欠場したこともありました。08─09シーズンで克服したとされていたのですが、最近、再発したのです。スピンなど回転運動は腰痛に悪影響を与えます。彼女がビールマンスピンを13年以降封印し、レベルが1つ下のスピンをしているのが、腰痛が深刻なことの証拠です」
ビールマンスピンは、足を頭上に上げてスケート靴のブレードをキャッチし、全身を涙滴形にして行うスピンである。腰への負担を減らすために、彼女が体重を落とさざるをえなかった可能性は高い。しかし、アスリートにとって脂肪は相反する機能を持っている。
「私は専門ではありませんが、フィギュアを見ていると滑る部分では相当な有酸素運動が要求され、無酸素でジャンプなどをすることが繰り返されています。減量はスタミナを奪い、有酸素的な持久力がガクンと落ちるのです」(富家氏)
脂肪とはオモリであるから、渡部氏が指摘したように、ジャンプ時に、着地した衝撃は強くなる。一方で、脂肪はエネルギーの貯蔵庫でもある。人間の体は、脂肪がなくなると筋肉をエネルギー源とする。したがって、現在のアスリートは体脂肪をコントロールすることが絶対条件なのだ。なぜなら、筋肉量の低下が故障につながっていくからだ。
「筋肉量が落ちると筋力も落ちます。そうなると、ケガをしがちになったり、古傷を痛めたりする可能性はあります。しぼりにしぼった体は衝撃に弱いのです」(前出・富家氏)
腰ばかりでなく、キム・ヨナは小学校時代に靭じん帯たいを痛めている。減量によって、関節周囲の筋力が衰えれば、古傷を再発する危険性もあるのだ。渡部氏はこう語る。
「フィギュアの選手は皆どこかに故障を抱えています。金メダルはケガがない選手が獲れるのであって、その日コンディションをベストに持っていくことによって、表彰台の真ん中に立てるのです」
浅田が開催地ソチに向けて飛び立ったその前日、キム・ヨナの元コーチであるオーサー氏はこんな意味深なコメントを寄せている。
「キム・ヨナは手ごわい。スケートもうまくなった印象だ。ただ、今回は真央の番だと思うよ」
本番直前のキム・ヨナには暗雲が垂れこめている。