シーズン開幕まで1カ月を切ったが、BIGBOSSは何も動じない。いまだに奇想天外な指導だと、色眼鏡で見られようが泰然自若。いつまでもそう思ってもらったほうが、むしろ好都合のようだ。Bクラス慣れしたチームを立て直すべく、シーズンを見据えた様々な秘密兵器が準備されているのである。
「12球団最弱の戦力なのは間違いないが、いかんせん練習や試合のデータが当てにならない‥‥」
と頭を抱えるのは、パ・リーグ球団スコアラーである。弱小チームの汚名を着せられながらも、他球団が警戒アラートを鳴らし続けるのは、BIGBOSSこと新庄剛志監督(50)に他ならない。まず、初っ端から周囲をかく乱させたのは「守備位置シャッフル」だろう。スポーツ紙デスクが解説する。
「最も衝撃的だったのは、シートノックや練習試合で、センターを本職とする五十幡亮汰(23)にショートを守らせたことです。マスコミ向けのパフォーマンスが半分で、もちろん五十幡を起用するベストの着地点はセンターでしょうが、連係するセンターラインの内野の動きを勉強させる意図があった」
チームは昨シーズン中に中田翔(32)を放出し、オフにもノンテンダーで主力を3人切り捨てている。もはやレギュラーと呼べる選手は、コンスタントに数字を残す近藤健介(28)ぐらいのものだ。手薄な戦力でシーズンを戦い抜くため、危機管理も兼ねているという。
「かねてから『ツーポジションは当たり前』と語る新庄監督は、全野手に複数ポジションを守ることを命じていますが、ポーズではなくフル活用しようとしています。打撃が好調なのにポジションが空いていない、という状況を防ぐ算段でしょう。ただでさえ1.5軍クラスが大渋滞しているチーム状況では、入れ替わり立ち替わり、総力戦で戦型をイジる必要がありますからね。オプションのひとつとして、開幕から五十幡のショートスタメンも十分に考えられるのです」(スポーツ紙デスク)
そんな中、本格的なコンバートを示唆されているのが、4年目の万波中正(21)のサード起用だ。
「強肩の割にコントロールが悪く、本職のライトではレーザービームが高く抜けることもしばしば。サードの守備を通じて悪癖を矯正する意図もありますが、いちばんの目的は右の長距離砲の生かしどころの模索でしょう。同じくアフリカ系ハーフのオリックス・宗佑磨(25)が外野から内野へのコンバートでブレイクした例がある。新庄監督から『バネと瞬発力を生かせるかも』と期待されるように、類まれなる身体能力でレギュラー筆頭格の野村佑希(21)を脅かす存在に急浮上しました」(スポーツ紙デスク)
解体からチーム再建を図るシーズン。守備のみならず、シャッフルこそが戦型の軸になるという。
「和気あいあいと打順を決める『ガラポン抽選会』も、実はシーズン仕様です。場所と時間の都合でホームゲームのみの開催でしたが、ランダムで組まれた打順では、対戦相手は初回の1、2番やクリーンアップに向けたバッテリーミーティングができない。新庄監督自身は『思いつきだから(笑)』とおちゃらけていますが、実に理にかなった陽動作戦なんです。メディアを使った派手な言動を鵜呑みにすると、足をすくわれます」(スコアラー)
すでに、BOSSの計略が仕掛けられているのだ。