キャンプ最終日の11月10日には、内野と外野の選手を入れ替えた守備練習が行われた。スポーツライターの飯山満氏によれば、この練習の効果についても深慮遠謀があったようだ。
「高校野球でも見られる練習法で、お互いの苦労をわからせる、という目的があります。ただ新庄監督は単純に、複数ポジションをこなせる選手を育成して選手層の薄さをカバーしようとしているのだと思いますね。それともうひとつ、こういう全体練習でチームを引っ張るキャプテンシーを持った選手を見極めるつもりでしょう」
栗山英樹前監督(60)は21年シーズンを前に「全員がキャプテン」と主将を任命しなかったが、強いチームリーダーを若手から発掘しないと戦えないとの判断か。となれば就任会見での、
「レギュラーなんか一人も決まっていない」
という新庄監督の「白紙宣言」も単なるリップサービスとは思えない。自身のツイッターでも、
〈選手全員を1回は あの大歓声の1軍のグランドに 立たせる事をここで約束します〉(原文ママ)
と呟いている。この一連の発言にも大きな意味があった。
「若手のやる気を引き出す以上に、高額な年俸をもらう選手に対してメッセージを送っているんだと思いますよ。中田をはじめ、中心選手であろうと切る時は切る、というのがわかってるわけだからね」(角氏)
伸び悩んでいる選手に個別指令を出したことも話題に。なかなか結果を出せずに500万円の減俸を食らった清宮幸太郎(22)には、
「ちょっとデブじゃね? ちょっと痩せない? 昔のほうがキレあったよ」
とダイエットを推奨。野球の成績が振るわずともオフになれば輝く杉谷拳士(30)に全バラエティー番組への出演禁止を通告し、18年ドラ1の吉田輝星(20)に対しては、襟足が伸びた茶色の「ヤンキー風髪型」をたしなめた。歯に衣着せぬ物言いも改革には必要なのだろう。ただ、一部からはこんな声も上がっている。
「体型や容姿に関してあれこれ言うのは差別的な観点から炎上してもおかしくない。でも、なぜか叩かれないし、逆に新庄監督をバッシングすると、メディアにすごい数の苦情やコメントが直接寄せられるんです。各メディアとも『新庄シンパ恐怖症』になってますし、チーム内でもBIGBOSSに逆らえない雰囲気があります」(日本ハム番記者)
ある意味、したたかな「恐怖政治」のような状況で、BIGBOSS流のムチは各方面に相当効いているようなのだ。ただ動機はどうあれ、22年シーズンは選手全員の奮起が期待できるかもしれない。角氏が言う。
「今のチーム事情を考えると、すぐに優勝というのは難しいでしょうね。単年契約だそうですが、23年完成予定の新球場1年目まで監督を続けるのは既定路線でしょうから、時間をかけて新生ファイターズを作り上げてほしい。このあとも冬季キャンプ、開幕後の戦いも注目しています」
飯山氏も同様の期待を込めて順位を占う。
「よくて4位、もしくは上がコケてAクラス滑り込みの3位でしょうか。なんせ、戦力がそろってないですから。22年シーズンはより高く飛ぶための助走期間でしょう」
「宇宙人」と呼ばれた新庄監督のこと、常人には理解できない指導法がチームにとって吉と出るか凶と出るか‥‥。