弥生賞ディープインパクト記念と並ぶ皐月賞(芝2000メートル)のトライアルレース、フジテレビ賞スプリングSが東のメイン。本番まで中3週という間隔に加え、距離が1ハロン短い芝1800メートルということから、弥生賞と比べて軽く見られがちだったが、このところ重みが増してきた感がある。
2歳時に賞金を加算できず、ここにきて急激に力をつけてきた遅咲きの馬が、この重賞を踏み台にしているからだろう。それに、あまり間隔をあけないほうが本番に向けて仕上げやすいのかもしれない。
いずれにせよ近年、ここで勝ち負けしてクラシックを制した馬は少なくない。02年タニノギムレット(ダービー)、03年ネオユニヴァース(皐月賞、ダービー)、06年メイショウサムソン(皐月賞、ダービー)、09年アンライバルド(皐月賞)、11年オルフェーヴル(三冠)、12年2着ディープブリランテ(ダービー)、13年ロゴタイプ(皐月賞)、15年キタサンブラック(菊花賞)、18年2着エポカドーロ(皐月賞)などが勢いに乗じて頂点に上り詰めており、まさにファン必見の一戦である。
今年は共同通信杯で意外な敗北(2番人気5着)を喫したアサヒ、新潟2歳S2着後、休み明けの京成杯で4着したアライバル、ホープフルS(3番人気13着)で人気を裏切ったサトノヘリオス、シンザン記念2着惜敗のソリタリオ、デビュー2連勝で臨んだ朝日杯FSで7着に敗れたドーブネ、堅実で大崩れのない共同通信杯3着馬ビーアストニッシドといったところが有力候補。さらに伏兵陣も多彩で馬券的には難解である。
まずはデータをひもといてみよう。
03年に馬単が導入されて以降、これまでの19年間、その馬単での万馬券は5回(馬連は4回)。この間、1番人気馬は5勝(2着7回)、2番人気馬は3勝(2着1回)。比較的順当に収まっているように見えるが、1、2番人気馬によるワンツー決着は1回のみ。荒れる時は荒れることを思うと、これまでの実績をうのみにしてはいけない、ということだ。
改めて今年の顔ぶれを見てみると、絶対視できるような抜けた存在はおらず、波乱ムードが漂っている。ここは穴党の出番とみて、大きく狙ってみたいのは、オウケンボルトだ。
まだ1勝クラスの身で、自己条件への出走も視野に入れてはいるが、ほぼこちらに挑戦する意志を固めており、きっちりと臨戦態勢を整えている。
土田調教師は「まだひ弱さが抜け切っておらず、もうひと回り体が大きくなってくれればいいのだが」と控えめではあるが、それでも「素質は見劣りしない。強敵相手にどこまでやれるか見てみたい」と、ヤル気をにじませているほど。
前走の水仙賞(1勝クラス)は、ゴール前でロードレゼルに差されてクビ差の2着に敗れたものの、3着馬との差は2馬身半。早めに抜け出したためにソラを使った(気を抜く)格好で、決して力負けではなかった。
「使われるたびに力をつけている」とは、コンビを組むM・デムーロ騎手の弁。相手なりに走る勝負根性は高く評価してよく、ここでも互角、もしくはそれ以上の勝負をしてくれるものと踏んでいる。
祖母オウケンサクラはGIIIフラワーCの勝ち馬で、曾祖母ランフォザドリームは、エリザベス女王杯2着馬(朝日杯チャレンジC、マーメイドS勝ち)。一族にも活躍馬は多く、血統的にも重賞でやれていい馬。
牡馬にしては450キロ台と少し小柄だが、あか抜けて均斉の取れた好馬体から素質を秘めていることは間違いない。晴雨にかかわらず大きく狙ってみたい。