それは春の珍事か、それとも「BIGBOSS」の狙い通りか。オフの話題を独占しつつも、昨シーズンからの選手大量離脱で戦力的には厳しいとみられていた日本ハムが下馬評を覆すオープン戦快進撃だ。その原動力は、コアな野球ファンでも「誰?」と言いたくなる「新9人の侍」だった!
新庄剛志監督(50)率いる日本ハムがオープン戦5勝2敗2分(3月11日時点、以下同)と好調だ。スタメンの打順を福引きの抽選器で決める「ガラポン打線」、お得意戦術でリリーフ投手を先発登板させる「オープナー」と、ビックリ箱のような「新庄マジック」采配が功を奏しているのだ。
「中田翔(32)や西川遥輝(29)、中継ぎの秋吉亮(32)といった中心選手が去り、チーム内横一線でのレギュラー争いがスタート。その競争心を煽りつつ、チームの雰囲気を明るくするための『ガラポン野球』が思いがけず奏功した。これまで1軍で実績を残していない選手から日替わりで、次々にニュースター候補が出てきている状況です」(日本ハム番記者)
最大のサプライズが大卒ルーキー投手の【1】北山亘基(22)だ。ドラフト8位ながらオープン戦2試合に登板。計3イニングで打者10人に対し、被安打1の無失点、8奪三振という驚きの快投を見せつけた。
これにはブルペンをあずかる武田勝投手コーチも「あれはバケモン。プロ相手にどんどん攻めて、まっすぐでも変化球でも空振りを取れる」と大絶賛。
「メジャー球団の関係者も『なぜこの投手が下位まで残っていたんだ! 実戦で動じないメンタルの強さはメジャー向き。ダルビッシュ有(35)を超えるかもしれない』とべた褒めだったという話です。投手への指導は門外漢だからと敬遠しがちの新庄監督もブルペンで打席に立ち、細かく打者目線でのアドバイスを送るほど買っている。開幕ローテ、あるいは昨季守護神の杉浦稔大(30)がケガで出遅れることから、新ストッパー起用案も浮上しています」(日本ハム番記者)
北山を見たBIGBOSSも「ホームベース3~4メートル手前の球の軌道がすごくいい」と手放しの褒めようだ。スポーツライターの飯山満氏が解説する。
「新庄監督の発言は、キャンプに招いた元阪神の藤川球児臨時コーチのことを念頭に置いた最大級の賛辞。藤川臨時コーチは『打者が打ちにくい球の軌道がある』という独自の理論の持ち主。つまり、火の玉ストレートを武器に超一流のクローザーとして活躍した藤川臨時コーチと北山を重ねているんです」
大谷翔平を二刀流として輩出した球団だけに、15年ドラフト1位で今季から二刀流に挑戦する【2】上原健太(27)も活躍が期待される。いったい、どういう選手なのか。
「投手としての成績は入団6年で7勝11敗と散々。ただ短距離走など瞬発系の身体能力は野手と比べてもチーム随一です。再起をかけて外野守備や打撃練習に取り組んでいる。稲葉篤紀GMをはじめ首脳陣も、背水の陣ながら191センチの恵まれた体格と非凡な野球センスを高く評価。新庄監督も、現役時代に当時の阪神・野村克也監督に二刀流を打診された。オープン戦ですが巨人戦に登板して三者凡退に切ったことがあり、キャンプから自身の体験をもとに指導していました。上原は18年の広島との交流戦第2打席で、プロ初安打となるソロホームランをライトスタンドに叩き込んでおり、投手らしからぬパワーとバットコントロールで、周囲の度肝を抜いている。大化けする可能性を秘めています」(球団関係者)
さらに北山と同じ大卒新人投手で、ドラフト6位指名の【3】長谷川威展(22)もかなりの「隠し球」だ。左の変則サイドスローで、最速151キロのストレートと左打者から急速に逃げるスライダーは、1軍で即通用してもおかしくない。
「他球団のスカウトが『こんなピッチャー知らなかった』と猛省するほどの掘り出し物。新庄監督も春キャンプで実際にバッターボックスに立って何球も要求するなど積極指導に乗り出しています。お眼鏡にかなったとみていいでしょう」(スポーツ紙デスク)