対して、王会長が満を持して配った「真理の書」とは何か。ソフトバンク関係者によれば、
「昨シーズン、8年ぶりのBクラスに沈んだチームに危機感を醸成するために、長嶋茂雄氏と並ぶ日本球界の至宝である王会長に、檄文を作ってもらったというのが正直なところ。王会長は、60年以上に及ぶ球界での知見をまとめたA4用紙5枚の小冊子を作成。昨年末には『投手編』を配布していた。今年のキャンプに合わせて『野手編』も加筆した完全版をまとめました。王会長も『あと100年経っても野球がある以上は真理だと思う。それくらい自信がある』と自画自賛したほどです」
その内容は、具体的かつ簡潔だ。例えば、打者が打席に立つ心構えについてはこうだ。
「例えばヤマを張ったっていい。他の球が来たら知らん顔して三振して帰ってくればいい。プロって、それくらいの決断が必要なんだよ。あれも来る、これも来ると打ってたら、あまりいい結果は出ないと思う。特にサヨナラのケースで打席に立った打者なんて絶対にそうだと思う。これに懸けるというくらいの思い切りを持て」
他にも数々、実践的な内容が記されているという。「練習と試合は別物」「決断のためには最大限データを生かす」「できないことがあったら練習したその日のうちに振り返れ」など、御年81歳とは思えないほどの情熱がほとばしっているのだ。
「王さんは、昨シーズン終了後に特別チームアドバイザーも兼任していますが、これは事実上の『現場復帰』にほかならない。2軍監督から昇格した藤本博史新指揮官ではやはり派手さに欠ける面があり、孫正義オーナーが王会長に直談判して今回の人事が決定した経緯がある。王会長にしても、年齢的に今回が最後の奉公という気持ちで、あえて火中の栗を拾ったというのが正直なところ。とにかくエネルギッシュで体力の衰えはまったく感じられず、現場にも顔を出して、若手選手にも積極的に声をかけている。早くもその恩恵は大きいと言えますね」(前出・ソフトバンク関係者)
くしくも、今季の開幕戦は両者の直接対決が実現。「新旧レジェンドの教え」により、勝利の女神はどちらに微笑むのか。