10人の新人騎手がデビューして1カ月経った。勝ち星をあげたのは、角田大河と今村聖奈の2人だけで、それぞれ4勝している。この2人は競馬学校生時代の時の実技でもほとんど1、2位を占めていたというから、力通りの結果が出ていると言っていいだろう。今のペースなら、30勝以上の勝利数をあげることも十分可能。
今村について言えば、デビュー前から大きな期待が寄せられていた。たとえば、元JRA騎手の細江純子さんが「鞍はまりの良さをはじめ、すべての面においてレベルの高さを感じる。皆さんが驚くぐらい活躍すると思っています」とコメントしていたほどだ。
確かに、騎乗フォーム一つとっても、背筋がピンと伸びていて格好いい。追い出してからもブレがなく、女性騎手とは思えないほど様になっている。しかも、笑顔を絶やさない明るい性格で美人。
そんな彼女だから、デビューしていきなり土・日曜日合わせて10鞍というモテモテぶり。結果は3着が1回だけだったが、随所に見せ場を作ってみせて非凡なところをうかがわせた。そして、翌週には5番人気馬ブラビオで初勝利。3週目にも2勝、4週目も1勝を挙げて計4勝だ。
特筆すべきは、力の必要なダートの1800メートルと2000メートルで、それぞれ2勝していること。そのうち2回はハナ差勝ちしており、勝負強いところを見せている。これは、競馬関係者へ大きなアピールとなったことだろう。
「メイショウの松本好雄オーナーはメイショウシロガネに乗ってもらってから、すでに6回自分の馬に乗せています。他のオーナーからも乗せてみたい、という声が出ていますから、騎乗数がドンドン増えていくのは間違いないでしょう」(トラックマンA氏)
彼女の強みは騎乗技術だけではない。小原靖博という強力なエージェント(騎乗依頼仲介者)がついていて、騎乗馬をしっかり揃えてくれるのだ。デビューした週に10鞍騎乗できたのも、彼の力によるところが大きい。
現在、小原靖博は福永祐一、岩田望来、岩田康誠も担当している。そのため、彼女は普段から大先輩に声をかけてもらうことが多く、そのアドバイスをレースに活かせるように努めているそうだ。身近に三冠騎手がいて話を聞けることも、メリットとなっているだろう。
そして忘れてならないのは、女性騎手だけに斤量面で恵まれていること。最後の追い比べで、この斤量差がものをいうのだ。
こう見てくると、やはり細江さんの予言的中も十分ありそうな勢い。女性騎手としても先輩の藤田菜七子をあっさり抜き去る日も近いかもしれない。
(競馬ライター・兜志郎)