中央競馬前半戦は、いよいよ佳境を迎える。5月1日から6週続けてGI戦が行われるとあっては、競馬ファンとしては浮き足だち、気もそぞろだろう。GWのただ中で行われる第一弾は、伝統の長距離戦の最高峰、天皇賞・春である。
2000メートルで争われる秋の天皇賞とは趣を異にしてつかみどころが難しく、人気どおり順当な決着を見ない傾向にあるのだ。
03年に馬単が導入されて以降の過去19年を見てみると、その馬単での万馬券は8回(馬連は7回)もある。この間、1番人気馬は4勝(2着2回)、2番人気馬は6勝(2着2回)で1、2番人気によるワンツー決着はわずか2回。
ディープインパクト(06年)やキタサンブラック(16年、17年)のように、抜けて強いと誰もが認めるような存在がいない場合は、ある程度は疑ってみる必要がありそうだ。
今年はタイトルホルダーとディープボンドが最右翼で、人気を分け合うとみられている。前者は菊花賞馬、後者は有馬記念で王者エフフォーリアに肉薄し、前哨戦の阪神大賞典をモノにしている。両馬とも阪神コースでは連対を外したことがないように、舞台の相性も抜群にいい。
であるなら、本番のここも──と、みてしまいがちだが、全幅の信頼を寄せきれるほどの馬とは思いにくい。両馬ともこれまでは追う立場であり、言わば挑戦者だったが、マークが厳しくなり、追われる立場になった存在。つまり、楽な競馬は望みようもないのだ。
特に菊花賞を逃げ切った時のタイトルホルダーは、楽に行かせてもらったツキもあったわけで、今回はそうはいかないだろう。というのも、今年は一流と評価される馬が少ない反面、長丁場で水を得た魚のごとく躍動できそうなスタミナ自慢が実に多いからだ。
最有力とみられる2頭を絶対視しづらいのであれば、穴党としてはどうしてもスタミナ自慢に目がいってしまう。ここは思い切って、ロバートソンキーに期待を寄せてみたい。
まだ3勝クラスの身。荷が重いとみられて当然だが、決して無謀な狙いだとは思っていない。秘めた能力、ポテンシャルの高さは相当なもので、十分通用するとみての狙いである。
そもそも3歳時、1勝クラスで2着した次のレースに神戸新聞杯を選んだほど。それだけ厩舎の期待が大きかった馬で、それに応えて3着に頑張った。勝ったのはコントレイル。次の菊花賞で三冠馬となる同馬との差はコンマ3秒。力は推して知るべしだろう。
しかしその後は、体質的なひ弱さが災いし続け、陣営は無理使いを避けて我慢を重ねた。放牧、休養を繰り返して、たくましく成長するのを待ったのだ。
間隔を置いて大事に使ってきたのが奏功し、ここにきて体がひと回り大きくなり、心身のバランスが取れてきた。前走の御堂筋Sは3着だったが、渋り気味の悪い馬場でも、しまいの脚は見るべきものがあった。
6カ月半ぶりの実戦を使われ、陣営の思惑どおり、この中間は大幅な良化ぶりをみせている。1週前の追い切りも軽快でリズミカル。林調教師をはじめ厩舎関係者が「強敵相手だが、どこまでやれるか。楽しみのほうが大きい」と期待感を口にしているように、雰囲気、稽古での動きは文句なしだった。
祖母はあのトウカイテイオー(皐月賞、ダービーなどGI4勝)の全妹という血統背景も魅力。父がルーラーシップとあっては距離的不安はなく、大いに期待したい。