阪神・掛布雅之育成&打撃コーディネーターが、著書「新・ミスタータイガースの作り方」を上梓する。若い世代をいかに鍛え、未来の「ミスタータイガース」を作るか。その野球理論と哲学には、阪神再建への秘策が詰まっている。
「どないなってんねん!」
虎ファンの怒号が球場にこだまする。阪神タイガースの2014年シーズンは最悪のスタートとなった。
巨人との開幕カードを1勝2敗としたが、その2敗はいずれも2桁失点。準本拠地の京セラドームに帰った中日戦でも、また2桁失点。投手陣が完全崩壊し、開幕4試合で37失点は、リーグワースト記録である。おまけに3月30日の巨人戦では、西岡剛と福留孝介が大竹寛のライトへのフライを捕球しようとして激突。衝撃で宙返りした西岡は人工芝に後頭部を打ちつけられ、救急車で運ばれる惨事となった。鼻骨、鎖骨、肋骨を骨折する重傷で、1カ月以上の戦線離脱を余儀なくされることに‥‥。これには掛布雅之氏も、沈痛な表情を浮かべていた。
「巨人の強さを印象づけてしまいました。先発の駒が足りません。中継ぎ、左のワンポイントも手薄で、先に失点を許すと逆転へゲームメイクしていくのが難しいですね。こういう時こそ投手は逃げずにインサイドのボールを積極的に使い、相手に恐怖感を与えなければならないでしょう。相手の腰が抜けるほどインサイドを攻めるんです。それと、抑えの呉昇桓〈オ・スンファン〉にしても、1人の打者に要する球数が多く、長いシーズンを考えると連投に不安が残ります」
本来は、スタンリッジ、久保康友が抜けた先発の穴を打線がカバーしなければならなかったが、4月1日の中日戦ではわずか3安打と沈黙した。
「3番の西岡が抜けるのは痛い。結果も出ていたし、打線のアクセントになっていました。不安だったゴメスがいいスタートを切っただけに、なおさら残念です。今こそ若手の力が必要になってくる。ピンチはチャンス、という言葉もあります。私自身、若手を底上げして戦力として送り出さねばならないという責任感を強く持ち直しました」
メディアが「掛布チルドレン」と命名した若手で開幕一軍に残ったのは、2年目の緒方凌介と新人・梅野隆太郎の2人だけ。二軍にいる若手がはい上がってくることが、チームの危機を救うためのキーポイントだろう。
掛布氏は4月16日に著書「新・ミスタータイガースの作り方」(徳間書店)を上梓する。まるでこの危機的現状を予測したかのような阪神再建の指南ノートであり、これをひもときながら、巻き返しの秘策を示してもらった。