プロ野球が開幕して、各球団が10試合以上を消化しました。悲喜こもごものスタートを切りましたが、我が阪神タイガースはベンチもナインも落ち着かない戦いぶりが続いています。投手陣が先発、リリーフ陣ともにピリッとせず、大量失点するケースが多かったからです。
4月5日のヤクルト戦(神宮)などは、苦しいチーム事情を象徴するようなゲームとなりました。打線が11得点しても、投手陣が12失点して負けてしまいました。結果を見ればわずか1点だけ届かなかった試合ですが、中継ぎ投手陣があまりにも不安定で、和田監督もゲーム展開をまったく読めなかったはずです。
「今日は3点勝負だから、まずは送りバントで塁を進めて確実に1点を取ろう」。逆に「この試合は1点ずつ取るより、積極的に打たせて大量得点を狙ったほうがいい」など、ベンチは最終的なスコアを予測して、サインを出します。でも今は、先発が降りればセーフティリードがない状況なので作戦が立てられません。
1試合でも1─0の完封リレーみたいな会心のゲーム運びができれば、ガラッと好転する可能性もあるのですが‥‥。早急に、新守護神の呉昇桓〈オ・スンファン〉につなぐ勝利の方程式を確立する必要があります。
それでも、プラス思考で捉えれば、投壊のほうが貧打で苦しむよりはマシです。先発投手は1週間に1回程度ですが、野手は毎日試合に出なければいけません。打てない試合が何試合か続くと、チーム全体が重苦しいムードに包まれてしまうのです。幸い、今の阪神は、打線は点を取れているので、チームとしての明るさは失っていません。
新外国人のゴメスが周囲の予想以上に好スタートを切ったことも、チームにとっては明るい材料です。開幕からの連続試合安打はチームの助っ人史上最長となりました。オープン戦では全てのボールを振ってしまうほどでしたが、ボールの見極めがよくなりました。私も開幕前に、右足の軸足にしっかり体重を乗せて、トップの形をきっちり作ることをアドバイスしましたが、本人がちゃんと意識して実行しています。
5番のマートンが絶好調なのも、ゴメスにとっては有利に働きます。他球団のバッテリーは塁をためてからのマートンとの勝負を避けようとしますから、ゴメスにストライクゾーンで勝負してくれるのです。もう少し体の切れが出て、日本の投手の配球に慣れてくれば、一発を量産する可能性も秘めています。「4番・ゴメス」が今季の阪神打線の目玉となるだけに、ぜひとも期待したいものです。
それと、忘れてはいけないのが「2番・大和」の存在です。開幕3試合目の巨人戦(東京D)で、西岡と福留がボールを追って衝突。西岡が肋骨骨折などで負傷し、長期離脱を余儀なくされました。それによって、今季は1番を任せるはずだった鳥谷が西岡に代わる3番に座り、代役二塁手の上本に1番を任せる打順となりました。
本来であれば、西岡の抜けた穴は相当大きいはずです。それを最小限にとどめているのが上本、大和の元気な1、2番です。特に大和は、昨季まではまだ頼りなさがありましたが、今季は他球団の嫌がる2番打者となっています。上本もバットを短く持って、センター返しの打撃を徹底することで一皮剥け始めました。
逆にベンチの計算が狂ったのが、開幕の「6番・三塁」を任せた今成です。チームでもトップクラスのバットコントロールを持つ選手で、オープン戦では本領を発揮していましたが、本番ではいいスタートを切れませんでした。
コースに逆らわず、丁寧に打とうという意識が強すぎるのが原因です。彼の場合、強引に引っ張って、一塁コーチに当てるぐらいの気持ちでちょうどよくなるのです。好調の4、5番を生かすためには、6番打者の役割が重要となります。もう一度、新井良と高い次元で三塁を争ってほしいものです。