小保方氏にコロがされたのは理研の“上司”たちも同じだろう。ただ、科学者の矜持ゆえか、夢から覚めるのも早かった。
論文の共著者である山梨大学教授の若山照彦氏は疑義が持ち上がると、いち早く論文の取り下げを進言した。また、同じく共著者である理研CDBプロジェクトリーダーの丹羽仁史氏は、4月7日の再現検証チームの会見に出席。それまで沈黙を守ってきたが、「論文の構成を助言する立場であり、直接、実験はしていない」「(STAP細胞は)あくまで一つの仮説」と、小保方氏を見放すような発言をしている。
しかし、論文の共著者の中で、まだコロがされている科学者もいる。理研CDB副センター長の笹井芳樹氏だ。一部報道では小保方氏との“不適切”な関係が指摘され、会見でも小保方氏が完全否定した、あの人である。全国紙科学部記者はこう話す。
「問題になった論文の出来映えから、実質的な執筆者は笹井氏だと言われています。となると、ほぼノーチェックで小保方氏の出してきたデータを論文にまとめたということになります」
今週中にも笹井氏は会見を開き、あらためて弁明する予定だが、事前に取材に答えた朝日新聞の報道では、反論会見を受けて「彼女の率直な考えや気持ちが述べられたと思う」「私の指導不足もあると思い、たいへん心を痛めた」と答えている。
そして、笹井氏は論文の撤回は妥当としながらも、「(他の万能細胞である)ES細胞では説明のできないことが多すぎる」「STAP細胞が存在しないなら、私たちが再立証に力を入れる必要はない」と、小保方氏の「STAP細胞はあります」という主張に同調しているのだ。
理研内部では2人の関係を、小保方氏と笹井氏のイニシャルをもじって「O─S結合」と呼んでいるという。もちろん、酸素(O)と硫黄(S)の掛け合わせで「排気ガス」という皮肉が込められている。
もはや、2人の関係はそんな皮肉が通用しないもので、もっと“黒い欲望”で結合していたとさえ言われているのだ。
STAP細胞は13年4月に米当局に特許出願されている。出願者は理研と東京女子医大などで、発明者は小保方氏と笹井氏ら7人の名前がある。論文発表以前に、こうした国際特許を目指して出願されるのは、科学の世界では常識となっているという。
科学ジャーナリストの寺門和夫氏はこう話す。
「かつては違ったが、現在、各国の特許制度は出願の時期が早いほうに、優先的に認められることになっていて、特に産業化される見込みのある科学的な発見や発明は論文発表前に出願をするのが常識的となっています。日本の権利を守るためには、正当な出願だったと言えるでしょう」
しかし、この特許出願にも疑惑が浮上している。
科学部記者が説明する。
「論文調査の中間発表後、小保方氏は取り違えが指摘されていた画像4枚の訂正画像を提出しています。その訂正画像は14年2月19日に撮影したとされていたのですが、そのうちの1枚の画像が特許出願の書類にあったのです。画像には撮影した日時を示すタイムスタンプが押されるのですが、小保方氏がこれを改ざんした疑いが浮上。すると、理研は突然、訂正画像の公開をやめたのです」
青色発光ダイオードの特許訴訟では、発明の対価は約600億円と認定された。巨額の利権で2人が結び付いていた可能性すら否定できないのだ。
「発光ダイオードの特許訴訟を受けて、現在では発明者となる科学者と出願者となる企業、研究所は特許権を巡って厳密な契約を結びます。つまり、特許権を発明者が出願者に差し出す代わりに、相応の対価を得る契約を結ぶのです。理研も同様で、特許で得られる利益を笹井氏や小保方氏が、そのまま得られることは考えにくい。ただ、特許を出願するだけで企業から潤沢な研究費が注がれますし、理研が支払う2人の給与が大幅にアップするという可能性はありました」(科学部記者)