最後まで小保方氏をかばう笹井氏はES細胞の権威として知られ、30代で京都大学医学部教授になった優秀な科学者だ。
「一時は、ノーベル賞候補とさえ言われていました。しかし、ES細胞は生成に卵子が必要なのです。人間に応用する場合、女性の子宮から卵子を取り出さなくてはならず、倫理的な問題で人への応用研究は実質的にできない状態で、その最中に現れたのがノーベル賞受賞者の山中伸弥氏でした。山中氏が発見したiPS細胞が、今や万能細胞研究の主流となり、ES細胞は非主流となってしまったのです」(科学部記者)
そのため、笹井氏も同席したSTAP細胞の研究結果発表の際に、小保方氏がiPS細胞の「300倍の効率」と主張したのは、笹井氏の山中氏への対抗意識が背景にあったと言われる。
「昨年1月、文科省が山中氏に年間110億円の研究費を10年間供給することを約束しました。STAP細胞にもこの規模の予算が投下されることが予想されていました。文科省などが支払う科学研究費の30%は『間接経費』で自由裁量が利く経費となります。笹井氏らは数億円規模の研究費を自由に使える立場となるはずだったのですが‥‥」(文科省関係者)
どんなに小保方氏が「200回以上、作成している」、第三者が「作成に成功している」と主張しても、特許使用料どころか、莫大な研究費も得られる見込みはない。もはや、小保方氏と笹井氏の「O─S結合」も切れかかっているのだ。
「笹井氏が証拠も示さずにSTAP細胞は存在していると主張しているのは、そこにすがらなければ、自分の地位がなくなることをわかっているからではないでしょうか」(科学部記者)
現に、「特定国立研究開発法人」化を先延ばしされた理研の損害は甚大だ。
理研関係者が語る。
「特定国立研究開発法人となれば、優秀な研究者には1億円の年収を支払うことができるようになるはずでした。それも小保方氏のせいで水の泡です」
理研が小保方氏を「トカゲの尻尾切り」のように、「改ざん」と「ねつ造」の責任を1人に押しつけたのも無理からぬことだったのだ。現在でも、理研にこだわる小保方氏だが、今後はどうなるのだろうか。
「不服申し立ての審査、再現実験の結果いかんではどうなるかわかりませんが、現状では先進諸国で彼女を採用する研究機関はないでしょう」(理研関係者)
そんな風前のともし火となった小保方氏について、大月氏はこう話す。
「確かに、小保方氏は“そういう人”でしたが、才能とは別次元の話です。“そういう人”はあらゆる業界にいて、時に非凡な才能を発揮することもある。現状ではSTAP細胞が存在するかはわからないということであり、もしかしたら、彼女も非凡な才能の持ち主であるという可能性はゼロではないはずです」
確定的な証拠が示せないままでは、小保方氏は「科学の」ではなく、「虚言の」天才だったということになってしまうことだけは確かなのである。