小保方氏には年間約2000万円の研究費が与えられていた。一方、上司の笹井氏はノーベル賞候補ということもあり、
〈11年度3億7千万円、12年度4億3千万円、13年度5億8千万円〉
と、かなり巨額な金が使用されていたのだ。共同研究者が、まず指摘したのが笹井氏の12年度の雑誌代である。
「ネイチャー誌を9セット購入しています。1セット年間4万2630円ですから、合計38万円ですよね。特に理系の研究者は紙なんて邪魔なので、電子版を買うことがほとんどなんですが‥‥」
次に指摘したのが、小保方氏、笹井氏が2人で行った出張費だ。
〈2人の出張が11カ月間で計55回、496万円〉
と記事にある。
「小保方さんはSTAP細胞を200回成功させたって言っていましたよね。一方で、月に5回出張に行っているんですよ。それも海外を含めてです。どう考えても実験は不可能ですし、これはかなり特異な回数です」(共同研究者)
そして、この経費の使用法にこそ疑惑の核心があると指摘するのだ。
「小保方さんの出張費を笹井研が負担しています。現在、研究費の管理はとても厳しく、各研究室が独立して採算をとるように指導されているはずです。彼女は彼女で申請すればいいのですから、笹井さんのところが出張旅費を肩代わりする意味がわかりません」(共同研究者)
両名の間には、この他にも経費を「スワップ(=交換)」させている項目があった。笹井研が小保方氏個人の出張旅費だけではなくタクシー代も肩代わりして、小保方氏のユニットが笹井研のケータイ代を支払っているのだ。
「こんなことは聞いたことがありません。年間予算は原則として使い切るというのが通例です。なので、年度末に、予算の過不足があって他の研究室の領収証を貸し借りする“調整”は暗黙の了解になっています」
しかしその場合、記録に残らないように処理するのが慣例だという。
はたして小保方氏と笹井氏の経費は正しく使われたのか? 文科省の基礎研究振興課の担当者は、こう答えた。
「今回は理研の運営費交付金などで行われたもので、研究所の中の話です。理研の内規に研究不正が認められた時は研究費を返還しないといけないなどのルールはあるようです」
研究費の不正使用で刑事事件に発展することはあるのか、元検察官で弁護士の田中喜代重氏に聞いた。
「悪質性をどこで立証するのかを含めて難しいでしょう。あくまで感覚的な話ですが、100万円を超える不正な資金の使用が認められれば刑事事件として動くという印象です」
小保方氏が所属したCDBセンター解体の話や笹井氏更迭の話も浮上している。共同研究者はこう訴える。
「現在、理研ではマスコミなどへの内部情報リーク犯探しが始まっています。そのことで、本件の解決に尽力した優秀な研究者まで疑われる、本末転倒な動きが起こっています」
STAP論文についてはすでに2つの不正が認定されており、小保方氏にはSTAP再現実験参加の要請が行われている。再現ができなかった時、事件が急展開を迎えることは必至の状況だ。