ダービーから中2週、6月17日の函館スプリントステークス(函館・芝1200メートル・GIII)。主戦のロードカナロアで挑んだが、
「あれはドヘタでしたね。直線入り口でずっと内にこだわっていて、でも4頭が前で壁になっていた。そこから何とか外に持ち出したんですけど、届かず2着。そんなこすいマネをしなくたって、ほぼひとマクリで勝てるような能力の馬なんですよ。メンバーも弱かったし。最初から外を回ってもよかったんです。それぐらい大胆に、豪快に乗らないと。岩田だったら外に出して回ると思いますよ。ここでも優等生の枠に収まっている競馬をするのでダメなんです。このレースを見て馬主がNGを出し、福永は“クビ”になりました」(競馬ライター)
その後、岩田に乗り替わったロードカナロアはスプリンターズステークス、高松宮記念、安田記念、そして海外の香港スプリントといったGIを次々と制し、13年度最強馬に選出されている。
「岩田に乗り替わってから、あの馬のよさが出たと思いますね」(競馬解説者)
勝ってなお評価を下げたレースもある。昨年10月の天皇賞・秋(東京・芝2000メートル・GI)でジャスタウェイに騎乗した福永は最強牝馬ジェンティルドンナを破り、栄冠を手にした。競馬解説者が続ける。
「かつては柴田善臣や内田博幸などが乗っており、折り合いがどうしようもなく、乗り難しい馬でした。彼らが競馬を徐々に馬に覚えさせたという布石があり、たまたまグーンとよくなったタイミングで福永騎乗の天皇賞になった。福永がずっと乗ってきて馬をコントロールしていったわけではなく、福永の腕で勝ったということは100%ありません」
元中堅騎手もこれに同意する。
「確かに馬が好調だから勝った。『福永がうまく乗った。凄い追い方でしたね』と言う競馬記者はいないし、むしろ『何でこんなに(馬が)強くなったのか』と質問するわけだ」
ジャスタウェイは今年3月29日にも、ドバイ(UAE)のデューティーフリー(GI)で2着馬に6馬身1/4の差をつける圧勝で海外制覇を達成したが、
「ハナ差、クビ差の叩き合いではなく、ブッちぎりでしたからね。腕ではなく、まさにいいとこ取り。運が向いていたということでしょう」(競馬解説者)
武のGI通算100勝に対し、福永は24勝。通算勝利も3616勝と1612勝というダブルスコア以上の開きがある(いずれも4月11日現在)。6年のキャリアの差を考慮しても、優等生が天才に迫る日はやって来ないかもしれない。