8月10日午後、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の田中富広会長は、安倍晋三元総理の銃撃殺害事件以降、2度目となる記者会見を開いた。
だが、田中会長の発言は「異常な宗教迫害とも言える偏向報道がキッカケとなって、ヘイト感情が誘発されている」などと、教会側の一方的な主張に終始。銃撃殺害事件についても「容疑者の犯行動機が当法人の信者である母親の献金によるものであると、いまだ確定もしていない情報による過剰なメディア報道によって、当法人の信徒からさまざまな被害が報告されている」などとして、マスコミを大批判してみせた。
統一教会はオウム真理教と並ぶ、日本国内におけるカルト教団である──。
被害者の救済など、長年にわたり統一教会問題に取り組んできた紀藤正樹弁護士は、著書などでそのように断じているが、まさにオウム真理教事件での「ああ言えば上祐」のペラペラ釈明を思い起こさせるゴーマン会見だった。
中でも、自民党と旧統一教会との関係で看過できないのが「名称変更問題」だ。
世界基督教統一神霊協会、いわゆる統一教会は15年、文化庁に世界平和統一家庭連合への名称変更を申請し、それまで18年間も見送られていた名称変更が一転、安倍政権下で認証されるに至っている。
田中会長は先の会見で「正体隠しのために名称変更したかのように報じられている」と反論したが、検察OBは次のように指摘した。
「前川喜平元文部科学事務次官は、8月5日に行われた野党の合同ヒアリングで、文化庁宗務課長時代に名称変更を拒否し続けていた事実を明かした上で、15年の突然の認証については『下村さん(当時の文部科学大臣)の意思が働いていたことは100%間違いない』と証言しています。要するに、当時の安倍総理⇒官邸⇒下村大臣のルートで、文化庁に名称変更認証へ向けた圧力がかけられたということになる。しかも下村大臣は翌年、旧統一教会と関係が深い世界日報社から、献金を受けている。すでに公訴時効期間を過ぎているので立件はできませんが、名称変更は下村大臣の『職務権限』に関わる大問題だったのです」
しかし、下村元大臣や自民党の政治的責任が消えてなくなるわけではない。この一件をズブズブ暗黒史として葬り去ってはならないのだ。