厳しい残暑が続くこの時期は、足が蒸れて水虫に悩まされる人も多い。これは「白癬(はくせん)菌」というカビが皮膚に感染して繁殖するからに他ならない。
一般的に、水虫は足だけに発症すると思われがちだが、手や頭、爪など体のあちこちで感染し、皮膚に赤みや水疱ができたり、カサカサしたりと症状も様々だ。特に爪に感染する「爪水虫(爪白癬)」は、日本人では10人に1人が罹患していると言われている。
爪白癬の患者は高齢者に多いのも特徴だ。これは、皮膚の角質が弱く、一度傷つくと治りにくいため。特に、基礎疾患を持っていると、免疫が落ちるため感染しやすくなる。
もし、爪が白色や黄色に濁っていたりすると「爪水虫」に感染している可能性が高い。進行すると、爪の厚みが増したり、ポロポロと欠けたりする。足の水虫と違って、痛みや痒みといった自覚症状がないため、気が付かないうちに進行してしまう。高齢者の場合は、親指が罹患すると足にうまく力をかけられなくなり、バランスを崩して転倒のリスクが高まるので注意が必要だ。
そのまま放置しておくと、爪が変形したり剥がれてしまうため「爪水虫」の兆候が見られたら、早めに皮膚科の受診が必要だ。
治療は、塗り薬と内服薬が用いられる。変色・変形した爪を元に戻すものではなく、爪が生え変わるまで続ける必要がある。そのため、治療期間は約1年から1年半ほどかかることが多い。
「爪白癬」は、治療期間が長期に及ぶ厄介な疾患ではあるが、日常生活の工夫で、ある程度は感染を抑えられる。浴室のマットなど足に触れるものはこまめに取り換え、足を清潔に保つこともポイントだ。通気性のいい靴や靴下を選ぶことも忘れずに心がけてほしい。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。