手や足が赤く腫れ上がってズキズキ痛い、熱もあるようだ──その症状は「蜂窩織炎」かもしれない。
聞きなれない病名だが「蜂窩織炎」は、皮膚とその下の組織の深部にかけて細菌が感染し、炎症が起きる病気。「蜂巣炎(ほうそうえん)」とも呼ばれる。
本来、人間の皮膚は細菌に対して非常に強いバリアを持っているため、感染することはほとんどない。しかし、外傷が原因でその傷口からブドウ球菌やレンサ球菌などの細菌が侵入して感染してしまうのだ。傷口は必ずしも大きなものでなく、引っかき傷や虫刺され、やけどなどの非常に小さな傷口から侵入する。他にも、アトピーや水虫などの皮膚疾患を患い、肌が敏感な状態の場合に発症することもある。単なる虫さされとの違いは、身体の片方の部位に症状が見られることだ。
「蜂窩織炎」にかかると、患部の皮膚に赤み、腫れ、熱感、痛みを発症する。足のすねや甲によく見られるが、他の部位の場合もある。特に足に発症した場合は歩行が困難になるケースも少なくない。炎症が重症化すると、高熱や悪寒、倦怠感、頭痛の症状が見られる危険もある。
治療は皮膚科を受診して抗菌薬による薬物療法が有効だ。軽症の場合は飲み薬で通院治療が行われる。
自宅では、患部を氷などで冷やし、特に足に感染した場合は患部を高く保つことなども忘れずにしたい。症状が改善されても、処方された薬の服用を自己判断で中止することは危険だ。再発の可能性があるため、医師から指示された治療期間を守り、薬の服用を継続しなければならない。
予防法は、皮膚を清潔に保ち、傷ができないよう注意すること。さらに、皮膚のバリア機能を維持するために、保湿を徹底すること。皮膚の病気がある際には、できるだけ早く治療を受けるようにしよう。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。