早い梅雨明けで長引いた酷暑とコロナ禍による喧騒が収まりつつあり、涼風に運ばれて秋がやってきた。今週から中央場所に戻り、開幕週のメインを飾るのは、ハンデ戦でよく荒れることで定評がある中山の京成杯AHと、中京で行われるセントウルSである。
中山のマイル戦は、おむすび型の変型な外回りコースで争われる。2コーナーのポケットがスタート地点で、加速がつくところで急に折れる最初のコーナー(2角)に出くわす。そのため、多頭数になるほど外枠の馬はハジかれたりするなど不利を被りやすく、脚質を問わず、内枠を引いた馬が有利とされている。このことは競馬ファンなら周知のとおりであろう。
今回はフルゲート(16頭)にならないとみられているが、人気どおり簡単に収まりづらい重賞である。馬単が導入された02年以降、これまでの20年間でみると、それがよくわかる。
馬単での万馬券は6回(馬連は5回)で、1番人気馬は4勝(2着0回)、2番人気馬は6勝(2着1回)。1、2番人気馬によるワンツー決着は一度もなく、いかに一筋縄では収まらない重賞であるかがわかるだろう。
年齢的には5歳馬が11勝(2着9回)と、他の年代を圧倒しており、よく連対していることは知っておいて損はなさそうだが、注目したいのは3歳馬。出走頭数が少ないわりに3勝(2着3回)をあげていることは特筆もので、それなりの実績ある馬が出走してきた場合は、陣営がヤル気を持って送り出してきたとみてよく、目は離せない。
もろもろ考慮したうえで期待を寄せたいのは、ディヴィーナだ。
前走の関屋記念は13着とブービー負けを喫したが、3カ月の休み明けで仕上がり途上の状態。しかもシブり気味の力を要する馬場で、そのあたりも影響があった。それでいて着順ほど勝ち馬と大きな差がなかったことを思えば、巻き返しは十分可能とみたい。
一度使われたことでガス抜きができたようで、この中間は落ち着きが出て、雰囲気が実によくなった。
「休み明けだと気負う面があり、前走はそんなところが見られた。しかし、使われたことで全ての面でよくなった感じ」と、友道調教師をはじめ厩舎スタッフは、口をそろえて変わり身を強調する。ならば、やれていいのではないか。
これまで4勝をあげているうちの3勝が芝のマイル戦と、最も得意とするところ。マイル戦は流れが速くなりやすく、持ち味である鋭い決め脚を生かすには都合のいい舞台だからだ。その4勝は全て中京であげたもので、右回りでの勝ち鞍はないが、決して右回りが不得手ということはない。
母ヴィルシーナは、13年、14年のGIヴィクトリアマイルを連覇した馬。ハンデは恐らく53キロで、軽ハンデを生かしての一発があっていい。
一方、中京で行われるセントウルSは、ダディーズビビッドの出番とみた。
3カ月半の放牧明けの実践になるが、早くからここを目標に乗り込まれてきており、臨戦態勢は整っている。1週前の追い切りも軽快でリズミカル。まずは力を出せる仕上がり状態にあるとみて間違いなさそうだ。
「前走(安土城S2着)後は、放牧でリフレッシュ。力もつけており、いい雰囲気にある」と、厩舎スタッフも仕上がりのよさを強調するほど。
相手はそろっているが、とにかく左回りの中京は〈2 4 0 2〉と相性抜群。近親、一族には女傑ヒシアマゾン(阪神3歳S、エリザベス女王杯)やエフフォーリア(皐月賞、天皇賞・秋、有馬記念)など活躍馬がズラリといる良血。良馬場条件に大きく狙いたい。