まさか本人の歌声で、あの名(迷)曲が聴けようとは!
10日放送「1オクターブ上の音楽会」(NHK)で、新日本プロレスのレジェンド・藤波辰爾が「マッチョ・ドラゴン」を歌った。
番組は「前代未聞の奇妙な音楽会が開演! 異色の歌謡曲はなぜ生まれた!? その秘話にせまる!」と題して始まった。竹中直人がホスト役を務め、その曲にまつわる関係者たちの証言VTRや当時の映像を紹介しながら、最後には本人が登場して、その名曲を披露する、というもの。
番組は2週にわたって放送され、第1夜は「スナッキーで踊ろう」と「イエロー・サブマリン音頭」が取り上げられた。今回は、映画「ゴジラ対へドラ」のオープニング主題歌「かえせ!太陽を」と、この「マッチョ・ドラゴン」だった。
「かえせ!太陽」もなかなかの選曲だったが、パンチがあったのはやはり藤波の「マッチョ・ドラゴン」だ。
もともとは藤波の入場テーマとして作られたのだが、その歌声から一部で〈リアル・ジャイアン〉などと揶揄されることもあった。見方によれば、藤波というレスラーそのままの、非常に真っすぐで真っ正直な歌声ともいえるが…。
番組では、藤波の妻や後輩・蝶野正洋が当時の思い出を語ったが、2人とも常に苦笑混じり。蝶野に至っては、合宿所で朝7時の起床にその歌が流れて「耳について離れない」とか「禁句」とまで言う始末。トレードマークのサングラスの奥の目は恐らく笑っていたはずだ。
そんな「マッチョ・ドラゴン」を、発表から37年の時を経て、「デビュー50周年」という節目の年に、藤波本人が熱い歌声で披露する。ファンにとってこんな僥倖があるだろうか。演奏も、ヘタに今風にアレンジせず、コーラスの「マッチョ・ドラゴン!」の後の「ちょうぃや~ん」としか聞こえないあのギターの音色もしっかり再現されていた!
なによりもレコード発表とともに製作されたという当時のガウンを纏い、歌いあげたあとの満足そうな(でもちょっと恥ずかしそうな)藤波の表情が、68歳の今なお現役レスラーである彼の生きざまと重なるのだ。
その姿に、ファンならずとも熱いものがこみ上げてきたのではないか。
(堀江南)