9月13日の「水曜日のダウンタウン」(TBS系)は「正体バレたら即脱落 マスクマン旅」企画だった。「色違いのプロレスマスクを被った8人の参加者が、声と背格好をヒントにお互いの正体を当て合う」もので、正体がバレてしまった者は即脱落。誤答した者はマスクの左右の目と口の部分のいずれかを外して、素顔の一部を晒さなければならない。しかも正体を言い当てるためには、指定した色のマスクマン(女性もいるのでマスクウーマンの場合も)に向かって口頭で「お前、○○だろ!」と言わなくてはいけないルールが設けられている。
進行役はケンドーコバヤシ。参加者はそれぞれ黒・青・赤・金・紫・銀・ピンク・茶のマスクを被って登場した。マスクは眉間のあたりに稲妻を模したパーツこそないものの、プロレス好きならすぐに「あ、スーパー・ストロング・マシーンだ!」とわかる形状のものだった。
補足すると「スーパー・ストロング・マシーン」とは、かつて新日本プロレスで活躍したマスクマンで、当初は「将軍KYワカマツに操られている」という設定で「ストロング・マシーン1号」として登場。なぜ「1号」かというと、同じ形状のマスクを着けた2号、3号、4号も現れ、「マシーン軍団」なるものが結成されたから。のちに1号は、ヒールからベビーフェイスに路線を変更。その際に「スーパー・ストロング・マシーン」に改名した。しかし、あるレスラーにより、リング上で「お前、平田(淳嗣)だろ!」とその正体をバラされてしまうのだ。マスクマンにとって正体をバラされることは、その時点で覆面レスラーとしての意義がなくなるわけで、あってはならないこと。まさに今回の企画を想起させる「事件」だったのだ。
参加者は遊園地の絶叫マシーンに乗ったり、お化け屋敷に入ったりして、恐怖のあまりに上げた声で正体がバレた者や、「お前、○○だろ!」の声でバレた者も。銀・ピンク・茶が次々と脱落していった。
そんな中、ひとりだけ異様にガタイがいい青マスクが、金マスクから「お前、長州(力)だろ!」と指摘される。そのプロレスラーのような体型と、少々聞き取りづらい喋り方から、確かに長州のセンはあるかと思われたが、これは誤答だった。金マスクは口元を剥がすことになり、その後も誤答を続け、片目を剥がしたところで内藤大助(元ボクシング世界王者)とバレてしまった。
その後、しゃがれた声が印象的な赤マスクが、紫マスクに「お前、椿鬼奴だろ!」と指摘されるも、これが誤答。声と剥がされた口元から、逆に紫マスクが矢口真里とバレた。
残った青・赤・黒マスクの3人は、ロケ場所を中華料理店に移動し、食べる時だけ口元を剥がす、文字通りの「マスク会食」状態に。そこで青マスクが「たぶん、わかるんだけど」と赤マスクに向かって「お前、(椿)鬼奴さんだろ!」と自信満々に指摘した。つい先ほど紫マスクが誤答したことを忘れてしまう「天然ぶり」を垣間見せると、ペナルティーによって口元を剥がしたが、それでも正体は判明しない。
その後、黒マスクが赤マスクを「お前、神取忍だろ!」と指摘するが、これまた誤答。逆に赤マスクから「お前、ロンブーの亮だろ!」と言い当てられて脱落するハメになった。ついに赤マスクと青マスクの「シングルマッチ」となり、戦いの舞台はカラオケボックスへと移った。
赤マスクはそのしゃがれた声で、葛城ユキの「ボヘミアン」を熱唱。聞けば聞くほど椿鬼奴なのだが…。続く青マスクは三橋美智也の「古城」を歌うが、どこかで聞いたことがあるような声だった。
まずは青マスクが「お前、くわばた(りえ)だろ!」と赤マスクを指摘するが、これはハズレ。次に赤マスクが「お前、藤波辰爾だろ!」と指摘すると、悔しそうにマスクを剥がす青マスク。そこには確かに藤波の顔があった。
そういえば藤波は「藤波辰爾の歴史探訪」なる番組で全国の名城を巡ってもおり、大の「城好き」で知られる。カラオケでの「古城」のチョイスはそれがゆえかもしれない。が、「いなづ~まが闇をさ~いて~、お~れを呼んでる~♪」の歌詞で有名な「マッチョ・ドラゴン」の頃と変わらない、微妙な歌声が敗因だったのでは。
ところで、スーパー・ストロング・マシーンに向かって「お前、平田だろ!」と言い放ったレスラーとは、藤波のこと(というか、企画説明の際にその場面が一瞬、映っていた!)。藤波も今になって、あの時の平田の無念を思い知ったかもしれない。
最後まで判明しなかった赤マスクの正体は明かされないまま終了。これによりSNSではその答えをめぐり、「まちゃまちゃ?」「北斗晶?」「はるな愛?」と、同じくTBSの日曜劇場「VIVANT」ばりの考察が繰り広げられているようだが、昭和のプロレス好きにはなかなか楽しめる企画だった。
(堀江南)