秋競馬は季節と同様、足早に過ぎていく。四季の移ろいがいかに早いかだが、競馬はそれとともに充実した、おもしろ味のあるレースが増えてくる。
クラシックの最終戦は、もう鼻の先に迫ってきているが、中山では天皇賞・秋の前哨戦となる産経賞オールカマーがメインとして行われる。絶対視できる馬はいないものの、秋のG1戦線を見据えてくせ者がそろい、なかなかの好メンバーとなった。
牝馬ながら中山をめっぽう得意にしているウインキートス、鳴尾記念を制して復活なったヴェルトライゼンデが満を持しており、安定味のあるキングオブドラゴン、久々になるも実力派のソーヴァリアント、さらに前走の宝塚記念で3着したデアリングタクト、天皇賞・春の3着馬テーオーロイヤルが続く。
まさに秋のG1を虎視眈々と狙っている馬たちの争いであり、ファン必見の一戦と言っていい。
まずは過去の傾向を見てみよう。
馬単が導入されてから20年になるが、その馬単での万馬券は3回(馬連は0回)。この間、1番人気馬は6勝(2着4回)、2番人気馬は4勝(2着4回)。連勝での万馬券はそう多くはないものの、1、2番人気によるワンツー決着は一度もなく、そう簡単に決着を見ない中穴傾向の重賞と言ってよさそうだ。
性別では出走頭数が少ないながらも、牝馬が健闘している。今年は前記したウインキートス、デアリングタクト、そして小倉記念3着馬のジェラルディーナからは目が離せそうにない。
年齢的には充実著しい4、5歳馬がよく連に絡んでいるが、古豪の6歳馬の活躍も目立っており、そのあたりは頭に入れておくべきだろう。
このように馬券的にもおもしろいメンバーがそろったが、穴党として最も期待を寄せてみたいのはロバートソンキーだ。こちらは5歳馬。ここにきての充実ぶりが目立つ1頭である。
前走は3勝クラスの日本海Sで1着。天皇賞・春(7着)以来、3カ月半ぶりの実戦で、少々余裕残しの仕上がりだった。しかしレースでは後方につけ、直線は外に持ち出して最速の上がり脚を駆使して勝ち上がった。力があればこそで、休み休み大事に使われてきただけに、まだまだノビシロは十分だろう。
周知のように1勝馬の身で神戸新聞杯に挑み、あのコントレイル(三冠馬)の3着に頑張ったほど。ポテンシャルの高さは確かで、その馬がたくましく成長してきたとあっては、ここで初重賞を手中にできたとしても何の不思議もない。
しかも休み明けを使われたことで、この中間、大幅な良化ぶりを見せているのだからなおさらだ。
「いい雰囲気。レースが楽しみ」と林調教師をはじめ、厩舎スタッフもヤル気をにじませている。
近親にトウカイテイオー(ダービー、ジャパンCなどG1 4勝)がいる血筋。晴雨にかかわらず、大きく狙ってみたい。
一方、菊花賞トライアルの神戸新聞杯は、既成勢力と夏の上がり馬的な新興勢力ないまぜの一戦。
馬券的には難しくもおもしろいが、イチオシしたいのはジュンブロッサムだ。菊花賞でも──とは言えないが、素質はかなりのものである。
前走(出雲崎特別、新潟芝1800メートル、1勝クラス)の勝ちっぷりはなかなかで、レコードのおまけつき。春は共同通信杯、アーリントンCでともに4着と、見せ場たっぷりに頑張っていただけに、力は十分足りていい。
祖母はダート界の女傑ゴールドティアラで、近親、一族に活躍馬がズラリ。期待したい。