そんな北朝鮮のトップに君臨するのは、言わずと知れた金正恩総書記(38)。しかしながら、近年の外交マターは事実上のナンバー2に委譲されているとささやかれている。全国紙外信部記者が耳打ちする。
「当局筋からの情報ですが、同じ母親から生まれた正恩氏の実妹・金与正朝鮮労働党副部長(34)の裁量が広がったと言われます。もともと、韓国に対する外交問題で顔を出すことはありましたが、他の国については“正恩案件”で、触れてはならない領域でした。その体制がコロナ感染を恐れる正恩氏の影響で変化しています。自身が先頭に立たなくても済むように“代弁者”として与正氏を育成している段階のようです」
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」の高英起氏も同様の見解を示す。
「正恩氏の行動履歴を見るに、相当コロナに神経を尖らせているのがわかります。最近は地方の農村や工場に赴く『現地指導』がめっきり減りました。コロナ前は月に3~4回だった頻度が、ここ3年はトータルで十指にも余る程度。近年で姿を見せるのは平壌で開かれる式典ばかりです。しかも、肥満体型かつヘビースモーカーです。昨年20キロほど痩せた体重もリバウンドしたように見受けられ、感染後の重症化リスクは高い。自らの不在を想定し、与正氏を表に出していると思われます」
それが顕著に表れたのが8月10日の「全国非常防疫総括会議」で披露された演説だろう。
「初めて、与正本人の肉声がメディアを通じて発信されました。13分余りのスピーチは、韓国から流れてきたビラが、北朝鮮でのコロナ蔓延の原因とするなど支離滅裂な内容。一方で、高熱で苦しみながらも防疫対策に奮闘した正恩氏を称える場面もありました。兄と妹の一心同体ぶりが強調された発言と震えるような声質が相まって、涙を流す聴衆も少なくありませんでした」(外信部記者)
演説のつかみはバッチリ。今後は、金王朝の外交窓口として献身的に兄を支えることになる。
「18年の平昌五輪では、韓国政府幹部と会食を重ねる『ほほ笑み外交』を展開して、翌年、ハノイでの米朝首脳会談につなげました。続くウラジオストクの露朝首脳会談は同行しませんでしたが、今後は事実上の対外的な国家元首となる。国同士の結びつきが強くなる一方で、プーチン大統領と対面する未来はそう遠くないようです」(高氏)
はたして、悪魔の合体でロシア軍の戦況は好転するのだろうか。