開戦からはや7カ月が経過した侵略戦争も今や形勢逆転。彼の国のインベーダーは西側諸国の包囲網にハネ返され、死に体も同然の戦況だ。そんな窮状をビジネスチャンスと捉えた、「女帝」の姿がチラつきはじめて‥‥。
ロシアによるウクライナ侵攻は、今や分水嶺を超えた戦局を迎えている。国際ジャーナリストの山田敏弘が解説する。
「ウクライナ軍の優勢が伝えられています。2月24日に、首都キーウをはじめとする都市部に先制攻撃を仕掛けたロシア軍は、3月の南部ヘルソン州を皮切りに南東部の都市マリウポリや東部の要衝リマンの制圧を発表。着実に占領地域を拡大して戦況を有利に進めてきました。ところが、夏頃から戦況は一変。西側諸国から高機動ロケット砲システム『HIMARS(ハイマース)』をはじめとする武器援助を受けたウクライナ軍の反転攻勢が目立つようになったのです」
東部と南部で反撃されたロシア軍は次々に敗走。9月10日には、最前線の東部ドンバス地域への補給ルートの要衝となる、ハルキウ州イジュームとクピャンスクが奪還された。続く13日のゼレンスキー大統領(44)の演説によれば、取り戻した領土は東京都の約3.7倍にあたる約8000平方キロに上るという。追いやられた侵略者たちは、目下、上がり目のない状況に四苦八苦するばかりなのだ。ロシア軍の劣勢ぶりを軍事アナリストがこう明かす。
「とにかく兵隊が不足している。8月に米国防総省が出した推計によると、ロシア軍の死傷者数は7万~8万人。陸軍全体28万人の30%弱がダメージを受けたことになる。さらに激しさを増した8~9月の戦闘で、累計の死傷者数が10万人を超えるのは確実。SNSや街の看板広告で18~60歳を対象にした新兵を募集していますが、人手不足解消には程遠いようです。背に腹は代えられず、民間の軍事会社を通じて刑務所の囚人まで出兵させたとも言われています」
そんな中、プーチン大統領(69)は苦肉の策に打って出る。21日に軍務経験のある予備役30万人を招集する「部分動員令」を発令したのだ。
「もともと、ウクライナ陸軍は約12万5000人とロシアの半分以下。ただし、『攻撃3倍の法則』とあるように攻め手は守り手の3倍の人員が必要で、到底足りていない。NATO諸国で数カ月にわたって最新の兵器を扱う訓練を受けてきた精鋭揃いのウクライナ兵に対して、退役軍人をも当てにせざるを得ないロシア軍の台所事情が一層浮き彫りになりました」(軍事アナリスト)
ウクライナ侵攻を巡るパワーバランスは大きく変化。西側諸国が進める経済制裁も相まってロシアは国際社会で孤立を深めるばかり。もはや、打つ手に窮している状態だ。先の軍事アナリストが解説する。
「9月15、16日にウズベキスタンで開催された『上海協力機構』に参加したプーチン大統領がインドのモディ首相(72)から『今は戦争の時ではない』と“口撃”を受けたんです。同様に中国の習近平国家主席(69)からも、ウクライナ侵攻をフォローするコメントはなし。蜜月であるはずの大国から一線を引かれてしまいました」
頼みの綱だった東側陣営の大国からもソッポを向かれたロシアに対し、救いの手を差し伸べようとする奇特な同志が現れたというのだ。