ロシアのプーチン大統領は7月19日、訪問先のイランの首都・テヘランでトルコのエルドアン大統領と会談。ロシア軍による封鎖で黒海に面するウクライナの港から小麦などの輸出が滞っている問題について、前向きに取り組む姿勢を見せた。
会談後、プーチン氏は「トルコの仲介の努力に感謝したい。我々は前進した。すべての問題が解決したわけではないが事態が動くことはよいことだ」と述べると、エルドアン大統領も「この会談の結果は世界によい影響を与えるだろう」と応じたが、事はそう単純な話ではないようだ。政治ジャーナリストがこう説明する。
「ウクライナ産の穀物輸出を支援するのは、西側諸国によるロシアの穀物輸出の規制を解除することが目的です。輸出規制で世界的な小麦不足になっていますが、もし西側諸国が制裁を解除すれば、すなわちロシアに金が入ることになります。2月にウクライナへの侵攻を開始して以来、プーチン氏にとっては初の旧ソ連圏外への外遊となりました。常に『暗殺』の危機にあるとされる彼がこうした行動に踏み切ったのは、長引く戦争への焦りとともに、持久戦を覚悟しているという面もあるでしょう」
日本国内では安倍晋三元首相の銃撃事件などもあり、ここ最近は、めっきりロシアのウクライナ侵攻のニュースが減少している。しかし、この間も多くの人が命を落としていることに変わりはなく、この状況はズルズルとしばらく続きそうな気配なのだ。
「西側諸国はロシア政府を罰するため様々な制裁を導入してきたものの、それにより各国の経済は日に日に悪化している。今後、数カ月すれば冬を迎え、燃料問題はより深刻になっていく。ロシアが主導権を握るエネルギー問題を解決しないまま穀物輸出の制限を解除すれば思うツボとなり、最終的にプーチン氏が勝利宣言するという最悪の事態になりかねません」(前出・政治ジャーナリスト)
今後も水面下で、熾烈な政治的駆け引きが繰り広げられそうだ。
(ケン高田)