スプリンターズSに続く秋のGI戦第2弾、今週は秋華賞がメインとして行われる。
「女心と秋の空」とは、よく言われることわざだが、しかしこの秋華賞は、荒れることが多い牝馬戦とは思えぬほど、比較的堅く収まっている。
02年に馬単が導入されて以降、これまでの20年間、その馬単による万馬券はわずか1回(馬連も1回)のみ。この間、1番人気馬は6勝(2着3回)、2番人気馬は7勝(2着4回)で、1、2番人気馬によるワンツー決着は3回。1、2番人気馬とも連対を外したのは、たったの3回しかない。とにかく順当に収まるケースが多いのだ。
確かに、この20年間の勝ち馬を見ると納得してしまう。02年のファインモーションを手始めにスティルインラブ(03年)、スイープトウショウ(04年)、ダイワスカーレット(07年)、アパパネ(10年)、ジェンティルドンナ(12年)、ショウナンパンドラ(14年)、ディアドラ(17年)、アーモンドアイ(18年)、クロノジェネシス(19年)、デアリングタクト(20年)と、以後の活躍を見れば牡馬勝りの猛女、つまり女傑だらけなのだ。
と、あっては今年も‥‥と思ってしまうところだが、さてどうか。
もうそろそろ‥‥という見方もできるところで、実際、桜花賞、オークスを制して二冠馬に輝いた最有力候補のスターズオンアースは、オークスのあと両前脚の骨折が判明。今回は故障明けで5カ月ぶりのレースとなるだけに、とても絶対視できるものではない。
また、トライアルのローズSを脚を余す格好で2着惜敗のサリエラは、レース間隔が短いことから体調を整えづらく、大事を取って出走を自重。そのローズSを制したアートハウス、同じくトライアルの紫苑Sを勝ったスタニングローズも、これまでの実績から全幅の信頼は寄せ切れない。
ということで、かつてないほどの混戦模様ととらえてよく、人気どおり順当に収まるとは思いにくいのだ。穴党としては今年はひと波乱あり、とニラんで、メモリーレゾンに期待したい。8分の4の抽選対象馬だが、勢いがあり、出走枠に入れるとみての◎だ。
6月の函館戦以来となった前走のローズSでは、強豪馬を相手に勝ち馬とコンマ5秒差の5着。これは高く評価していいのではなかろうか。
3カ月ぶりの実戦で、しかも初めてのオープン戦。前半、少々折り合いを欠く場面が見られたにもかかわらず、終始6番手を追走。最後まで頑張り通したことを思うと、力は確かとみていいだろう。
もちろん、休養後に一度使われたことで状態は良化している。この中間の調整も抜かりなく進められていており、稽古内容が実にいい。しっかりと乗り込んでおり、1週前の追い切りもリズミカルで軽快だった。
「春に比べて、体が丈夫でたくましくなったことは確か。思いどおりの調教を課せられるようになった」
そう厩舎スタッフが口をそろえて、成長ぶりを強調しているほどだ。
父オルフェーヴル譲りの強烈な決め手が身上で、一戦ごとに末脚は磨きがかかってきている。であれば、チャンスは十分あるとみていいのではないだろうか。
1200メートル、1600メートル、1800メートル、2000メートルと、使われながら距離を延ばしてきて、それにきっちり応えて好結果を出している点も、レースセンスのよさを感じさせるところ。
近親にこれといった活躍馬は見られないが、母系は欧州の一流血脈。アカ抜けて均斉の取れた好馬体も魅力で、有力どころと比べて実績は見劣るが、頂点に立っていい馬である。
良馬場条件に大きく狙ってみたい。