93年5月、有名女性芸能人らによるヘア写真集ラッシュが続く中、山本リンダが都内のホテルで写真集「WANDJINA(ワンジーナ)」の出版記念記者会見を開いた。
3月から4月にかけてオーストラリアと日本とで撮影に臨んだという写真集には、大胆な網目水着や、エナメルのボディスーツ、さらには透けたビニールを素肌にまとっただけという、数々の挑発的なカットが満載。会見の日もメタリックシルバーのコートに身を包んで登場した山本は、
「タイトルの『WANDJINA』は、オーストラリアの先住民アボリジニの言葉で『大地の母』を意味します。ヘアの問題もありましたが、興味本位ではなく、女性って素晴らしいなぁと思ってもらえて、自分でも納得できるような作品になるならと、OKしました。いつもやっている水泳と、お風呂でのボディブラッシングを念入りにし、時間がある時にはいつも全身にクリームを塗って、肌の手入れを怠らないようにしました」
写真集にかける、並々ならぬ思いを語ったのである。
ところが写真集発売からほどなくした5月23日──。
大阪朝日放送の深夜ラジオ番組「誠のサイキック青年団」で、タレントの北野誠がこの写真集を取り上げ、「あんなん買ってるやつの気が知れん」「整形箇所が100は超えている」と発言。これに山本側が大激怒し、名誉棄損だとして、朝日放送に慰謝料1億円を要求する大騒動に発展したのである。
さっそく朝日放送の関係者に取材すると、私の取材にこう答えた。
「抗議を受け、制作部長が上京。なんとか別の番組へ出演していただく、ということで先方に納得いただいたようなんですが、半月ほどして内容証明が送られてきて、そこに『慰謝料1億円と謝罪広告を要求する』という文言があったんです」
朝日放送では「写真集を買い上げてリスナーにプレゼントしたい」という提案も行ったようだが、山本サイドが首を縦に振ることはなかったという。
ところが、長引くと思われたこの騒動は8月5日、急転直下、両者が和解記者会見を開き、北野が山本に直接謝罪することで、一件落着することに。
皮肉なことに、関西のローカルタレントだった北野の名前が関東でも知られるようになり、テレビ局からも「危ないタレント」として、コメンテーターの依頼が殺到。その後、深夜番組「トゥナイト2」(テレビ朝日系)で火曜日のレギュラーを担当することになるのだから、本当に芸能界はわからない。
つまり、北野にとって山本は、まさに「幸運を呼ぶ女神」だったことになる。
(山川敦司)
1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。