6年ぶりのJ1復帰を決めたサッカーJ2のアルビレックス新潟。J2降格後、低迷が続いていたチームは、何を転機に躍進したのか。アルビレックスに密着取材を重ねてきたサッカージャーナリストの解説をもとに「大化け」した躍進の秘密を探る──。
J1昇格が決まった10月8日のベガルタ仙台戦後、JR新潟駅には祝いの横断幕が掲げられた。駅の南口では「新潟日報」が用意した1万5000部の号外を求めて多くのサポーターが長蛇の列を作り、NHKを含めた地元テレビ各局もニュース番組で大々的に取り上げた。
地元がこれほど歓喜に沸いたのも無理はない。アルビレックスは04年から17年まではJ1に在籍し、年間の平均観客動員が4万人を超えた時期もあるほどの人気クラブ。ところが、J2降格後の18年からは16位、10位、11位‥‥。J1参入プレーオフの出場権すら獲得できない5年間の低迷期を経験した。サポーターにとっては、まさに臥薪嘗胆。待ちに待ったJ1復帰だったのだ。
「潮目が変わったのは、昨季まで監督を務めたアルベル・プッチ・オルトネダ氏(54)=新潟監督時代の登録名はアルベルト=の目指すサッカーが浸透したことです」と話すのは、サッカージャーナリストの安藤隆人氏だ。
アルベルト氏は、スペインの名門FCバルセロナでスカウトや育成年代の責任者を歴任した知将。低迷が続くアルビレックスに三顧の礼をもって迎えられた。就任1年目の20年シーズンこそ結果につながらず、前年よりも順位を落としたが、2年目の昨季は大きな飛躍をみせた。
「アルベルト氏本人は攻撃的サッカーを標榜していましたが、単にFWの個人技に頼るのではなく、DFからじっくりとビルドアップ(ボールを保持して前に運ぶ)して相手を崩していくスタイルを追求しました。それが、きっちりした守備を確立することにもつながったのです」(安藤氏)
実際、アルベルト氏が就任する前年の19年シーズンでは、リーグ2位の得点数を記録しながら最終順位は10位。守備に安定感を欠き、ブラジル人選手の個の能力やコンディションに依存した結果の成績だった。
それが就任2年目の昨季、目指すサッカーが早くも芽吹く。開幕から13戦無敗(10勝3分)とスタートダッシュに成功し、シーズン中盤まで首位を快走。最終的には6位に終わったが、サポーターたちの期待が確実に高まるシーズンだった。アルベルト体制3年目の22年こそ悲願のJ1復帰へ。そんな思いを胸に今季を迎えるはずだった──。