市川團十郎とともに、歌舞伎界を代表する名門として知られる梨園の大名跡は、尾上菊五郎。七代目菊五郎を父に持ち、昭和の仁侠映画で人気を博した女優・富司純子を母に持つのが、寺島しのぶである。
男子しか名跡を継げない歌舞伎の世界に生まれ、そんな梨園に対する反発もあって、03年の主演映画「赤目四十八瀧心中未遂」では、母親の反対を押し切って大胆なベッドシーンに挑む。
その年に出演した「ヴァイブレータ」「ゲロッパ!」での演技が認められると、第27回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞をはじめ、日本国内外で10以上の映画賞を受賞。実力派女優として、その名前を轟かせたのだった。
その寺島が結婚相手として選んだ相手は、これまた「梨園初」となる、フランス人のアートディレクター。07年3月6日、東京グランドホテルでの結婚会見には、100人を超す報道陣が詰めかけた。
夫になるローラン・グナシア氏は05年に、デザイナーのアニエス・ベーに誘われて来日。アニエス・ベー・ジャポンでプロデュースを手掛けたのち、「ラボアット」というデザインを設立し、クリエイティブ・ディレクターとして活躍していたが、寺島いわく、
「2年前の11月に出会いました。私のひと目惚れです。彼とはたまたま誕生日が一緒ということもあって、ご飯を食べようと誘ったり。今まで見たこともない男性だったので、ありとあらゆる手を使ってアタックしました。彼には子供がいますが、結婚はしていませんでした。フランス人にはそういう人が多いとは聞いていましたが、私もまさか結婚するとは思っていませんでした」
ローラン氏が一児の父であることを告白した寺島は2月26日に入籍を済ませ、小学校1年生になるローラン氏の娘と3人暮らしを始めていたのだった。
とはいえ、ローラン氏は来日まだ2年目とあって、コミュニケーションについては、
「2人の共通語はシングリッシュ。心臓と心臓で話しています。言葉があまり通じない分、英語でシンプルなことしか言わず、我慢するようになりました」
そして寺島は、こんなことも言うのだった。
「もし男の子が生まれたら、歌舞伎役者に。ハーフの役者がいてもいい、と言われました」会見場の記者たちは、大いに沸いたのである。
結婚から5年後の12年9月。2人の間には待望の長男が誕生。一部メディアによれば、彼女は息子を一人前の歌舞伎役者にすべく、日々、演技指導から日舞など、芸事の英才教育を施しているとも伝えられる。「ハーフの歌舞伎役者」誕生のため、情熱を注いでいるようだ。
(山川敦司)
1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。