日本が初戦で顔を合わせるドイツは、欧州予選を9勝1敗と圧倒的な強さで突破した。しかし、すでに触れた通り、現状の仕上がりは今一つのようだ。この点に大住氏は期待を込める。
「0-1で敗れたハンガリー戦では、ハンガリーの守備が光ったのですが、ボールを奪った後の攻撃が鋭かった。いったん攻め上がると、しっかり人数をかけており、こういう戦いをすれば日本もドイツに勝てるかもしれないと思いました」
後藤氏も、ドイツの“弱点”に着目して勝機を分析する。
「DFから中盤へのボールのつなぎが非常に遅かった。日本が9月のアメリカとの強化試合で見せた前からボールを奪うサッカーができれば、けっこう効くと思います。また、初戦ということで、日本の情報を持っていない。直近数試合のビデオ分析はしているでしょうが、本番での試合を見ているわけではない。もちろん日本も同じ条件ですが、格上のチームに完璧に分析までされてしまったら勝ち目はない。アメリカ戦も、デュッセルドルフで行われていたにもかかわらず、ドイツの関係者はほとんど視察に来なかったそうです。日本のことよりも、2戦目のスペイン戦やその先の決勝トーナメントのほうに気持ちが向いているのは確かでしょう。そういった点を考えれば、日本にもチャンスはあると言えます」
ドイツのキープレーヤーはMFのヨシュア・キミッヒとイルカイ・ギュンドアン。後藤氏によると、とにかくこの2人を経由して攻撃が組み立てられるので、日本としては絶対に潰す必要があるという。
「そのためには、前線の選手が彼らのボールを果敢に奪いにいかなければならない。具体的には、前田大然(25)、久保建英(21)、伊東純也(29)などです」
キミッヒとギュンドアンで攻撃が組み立てられなければ、中央へのロングボールで攻めるしかなくなるという。
「そうなれば、日本のDF陣は高さのある選手が揃っているので、ある程度ハネ返すことができるでしょう。また、GKのマヌエル・ノイヤーは足技に自信があるので、DFからのバックパスなどを簡単にクリアせず、自分でキープする傾向がある。前田あたりがそれを狙って引っ掛ける(奪う)ことができれば、得点につながる可能性も出てくる」(後藤氏)
安藤氏は、この初戦、とにかく大敗しないことが大事だと念を押す。
「引き分け以上で勝ち点を獲得することが理想ですが、負けるとしても1点差の惜敗に止めなければいけません。ここで大敗してしまうと、中3日で立て直すのは難しい。勝ちを計算できる次のコスタリカ戦にも影響してしまうし、得失点差も重くのしかかってくる。2006年大会の二の舞になってしまいます」
ちなみに2006年大会は、グループリーグ初戦のオーストラリアに1-3と完敗した後、クロアチアに0-0、ブラジルに1-4でF組最下位に終わったばかりか、日本らしさを見せることすらできない大会だった。当時のジーコ監督が思い描いていたベスト4どころか、協会が望んだ2大会連続の決勝トーナメント進出もできなかった。同じ轍を踏まないためにも、今回のドイツ戦は結果が何よりも重要となる。