茨城県では今、2人の国会議員が大きく注目され、明暗が分かれつつある。
その一人はほかでもない、葉梨康弘前法相だ。当選6回で念願の法相という重要閣僚に抜擢されながら「死刑のハンコ」発言で、アッという間に更迭された。地元・茨城3区の支持者が嘆く。
「東大法学部卒、元警察官僚の超エリートだが、地元では偉ぶったところもなく、腰の低い人だった。今回の入閣で義理のお父さんの跡を継いで、将来、大物国会議員になると期待がかけられていた矢先だっただけに、残念のひと言ですよ」
義父は国家公安委員長と自治大臣を務めた、当選12回の葉梨信行氏で、地元では絶大な人気を誇った。それだけに今回の更迭には、地元では悲鳴にも似た声が起こる。
12月には茨城県議選があるが、中には葉梨氏との二連ポスターもあり、頭を抱える候補もいる。「まだ63歳だし、捲土重来を期待するだけ」と地元有力支持者は希望を語るが、次の出番はあるのか。
一方、同じ茨城県で葉梨氏のつまずきを横目に存在感を増しているのが、永岡桂子文科相だ。自民党関係者が言う。
「昨年の衆院選で『無敗の男』と言われた立憲民主党の中村喜四郎氏を茨城7区で初めて破り、今回、文科相に大抜擢された。その途端に旧統一教会問題が勃発。力量が疑問視されていましたが、かなり難しいと言われていた宗教法人への質問権を行使するところまでこぎつけた。なかなかのヤリ手ですよ」
宗教法人法では、宗教法人に法令違反などが疑われる場合、疑問を質す質問権を行使できると定めている。しかし、その行使は宗教法人の解散命令にもつながりかねないため、扱いには慎重性が求められる。制度創設以降、一度も使われたことがない「伝家の宝刀」。それだけに、永岡氏がどんな決断を下すのか、国民の関心は高まっていた。
そして11月11日、ついに行使表明に踏み切ったわけだが、彼女の地元の評価はどうか。支持者の一人は、
「国会での受け答えも堂々としていて、素晴らしい。言っちゃ悪いが、当初は衆院議員だった夫が急逝して、その代打で初出馬した。どこまでできるか、不安は大きかったですよ。しかし肝っ玉母さんよろしく、ここまで大物になったわけでしょ。今後もどんどん重要なポストを任されるんじゃないかな」
明暗がくっきり分かれた2人。政治の世界はまさに、一寸先は闇だ。
(田村建光)