対抗できるのは現在、リーグ2強を形成しているオリックスしかいないでしょう。このチームは金子という絶対的なエースを持っていることが強みです。
金子は5月31日の巨人戦(京セラD)で9回を無安打無得点に抑えましたが、味方の援護がなくチームも延長戦の末に敗れました。144球の疲れも見せず、志願の中5日で臨んだ6月6日の阪神戦(甲子園)では6回2失点で降板。しかし、エースを負け投手にできないと、野手陣が奮起して3点差をひっくり返す逆転勝利。絶対的なエースの存在はチーム全体にいいリズムを与えているのです。
西の開幕8戦8勝も、金子から学んだ部分が大きいはずです。2人に共通して言えるのは、投げるテンポがよくムダな四球を出さないところ。この2枚看板に加えて、3番手のディクソンも安定していますし、松葉、東明の若い投手も投げるたびに成長しています。馬原、佐藤達、平野佳とつなぐ勝利の方程式が確立されており、先発投手にとっては6回を全力で抑えられればいいという安心感も、好結果につながっているのでしょう。
打線はソフトバンクほどの破壊力はないものの、糸井というしっかりした核があります。主砲のペーニャは穴が多い打者ですが、打率の低さは糸井がカバーできるでしょう。2人合わせた数字が3割、70発ならソフトバンクとの優勝争いにも優位に立てるはずです。
選手としていちばん衝撃を受けたのは日本ハムの大谷です。高卒1年目の昨季から二刀流の賛否両論がありました。私も投手に専念するべきと言いましたが、そんな議論をはるかに上回るスケールを持っていることを、交流戦2年目のプレーに感じさせられました。プロ野球80年の歴史でも類を見ないほどの選手です。
5月31日の阪神戦(札幌D)では能見から右翼席への125メートル弾を放つと、6月4日の広島戦(札幌D)では160キロの剛球を披露して前田に投げ勝ちました。打者としては、まだ下半身が使い切れていませんが、それでいてあの飛距離です。相当にリストが強いのでしょう。この先、どれほどの打者に成長するのか末恐ろしさを感じます。先発投手としての調整があるため、規定打席数には到達しなくても、チーム内での不協和音も生じないはずです。周りが何と言おうと、チームメイトを納得させるだけのパフォーマンスを見せつけています。
残念だったのは、伊原監督が休養した西武の低迷です。西武というチームはセ・リーグでいえば、巨人や阪神と同じ存在。ライオンズの絡まない優勝争いは盛り上がりに欠けます。渡辺前監督の自主性を尊重する野球から、昔のような管理野球に戻ったことで選手にも戸惑いがあったのでしょう。野手では中村、投手では岸とリーグを代表する選手を擁しているだけに、田辺監督代行の下で台風の目としてパを盛り上げてほしいものです。