世間では「神対応」などと言われたものだが、筆者には、全くの違和感しかなかった会見…それが、妻の不貞疑惑が報道された後、「誰が聞いたってクロだと思いますけどね」と笑いながら、「(本人から)細かく聞いているよ。事情聴取みたいに3時間、4時間」と詳細を述べた、17年12月14日の太川陽介の記者会見だった。
太川は95年、ドラマで共演した女優の藤吉久美子と結婚。太川は初婚で藤吉は2度目。6年後の01年に待望の男児が生まれてからは、夫婦そろって旅番組やバラエティーに出演し、おしどり夫婦ぶりをアピールしていた。
しかし、結婚から22年を経たこの年、藤吉と大阪朝日放送に勤務する50代後半の既婚者との不貞疑惑が「週刊文春」誌上に掲載され、急遽、太川が会見を開くことになったのだ。
集まった150人の報道陣を前に、「今回は、ウチのバカもんが軽率な行動をとってこんな騒ぎになって…。本当に申し訳ないと思っております」と口火を切って謝罪した太川。ところが、まあ、しゃべることしゃべること。
「文春」記者に直撃された際には、「何を聞かれたか覚えていないぐらいショックだった」というが、藤吉がイベント出演のために訪れた宮崎・都城市で、くだんの男性とホテルの同室で過ごしたことを告げられると、「翌日に控えたライブの準備を手伝ってもらうため、部屋に招いて。で、疲れが取れず、そのまま寝ちゃったと…。疑うよね?」と苦笑い。
だが、彼女から「そういうの(男女の関係)じゃないから信じて」と釈明されると、「わかった、信じる!僕が守るから。終わり!」と答えたといい、「カミさんだもん。僕は信じる」と離婚しないと断言。で、最後はカメラマンの要求に「やめてよ~」と言いながらも、ルイルイポーズを4度も決めて円満な終結を強調し、会見を終了したのだった。
一方、夫の会見から7時間後、羽田空港で記者会見に臨んだ藤吉は、スッピンのまま「こんな妻で申し訳ありません」「もう彼がいないと生きていけない」と号泣。なぜスッピンで現れたのかはさておき、夫同様、こちらの会見も違和感は否めなかった。
ところが、翌日のスポーツ紙には「太川男気」「太川神対応」の文字が。さらにワイドショーでも太川の対応を「たいしたものだ」と称えた。が、しかし、本当にそうなのか。
なんだか、モヤモヤしていると、翌週のTBS「サンデー・ジャポン」に出演した女医の西川史子がこう言い放った。
「すごく怖い。寛大な夫を完璧に演じたのは、妻を守るというより自分の体裁を守るための会見だったのかな」
このコメントに、思わず膝を打ったのは、筆者だけだろうか…。
(山川敦司)
1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。