記者という仕事柄、筆者はこの三十数年で芸能をはじめ、事件、事故、皇室と数多くの記者会見を取材してきた。そんな中で、危機管理のスペシャリストたちが「満点だった」と口を揃えるのが、高島礼子が元夫・高知東生の逮捕から6日後の16年6月30日、京都タワーホテル内の貸会議室で行った記者会見だった。
高知が交際相手の女とともに、横浜市内のホテルで薬物所持の現行犯で逮捕されたのは、6月24日午前9時半。その日、高島は7月21日から始まる連続ドラマ「女たちの特捜最前線」(テレビ朝日系)の収録で京都入りし、撮影に臨んでいた。
関係者の証言によれば、彼女のもとに一報が入ったのは、午後になってから。急遽、彼女が所属する太田プロの幹部とテレビ朝日の担当者が京都入りし、本人を交えて緊急対応協議が行われたとされる。
さて、会見の当日。ほぼスッピンに地味なブラウスという、まるで近所のスーパーに買い物に出かける主婦然とした姿で現れた高島は、
「本来ならば、もっと早く皆様の前へ出るべきでしたが、気持ちの整理と事実関係が明らかになってからと思って。事情聴取と(薬物)検査を受けなければなりませんでしたので、その報告も併せてお話しさせていただきます」
自らも尿検査を受けたことを公表し、6日遅れで会見に至った経緯を説明したのだった。むろん会見では、記者たちから矢継ぎ早に質問が繰り返される。しかし、彼女はメモを見ることもなく、ひとつひとつ自分の言葉で説明。最も強調したかった「自分は薬物とは一切、関係ありません」というメッセージを、メディアを通じて視聴者に伝えたのである。
後日、この「満点記者会見」について、彼女と仕事をしたことがある映画スタッフの、こんな話を憶えている。
「そこらのポッと出のお嬢様女優とは違い、高島はお茶くみをしていたOLから、地を這うような努力で大女優に上り詰めた苦労人。当然、相当な修羅場もくぐってきたはず。つまり、根性が違うということだよ、根性が」
とはいえ、不貞だけでも許せないのに、よりによって夫がその女とホテルで薬物を使い、逮捕されるという、あまりにもひどい仕打ち。
高知は会見からおよそ1カ月後の7月29日に保釈されたが、夫婦は一度も対面することなく、電話で話し合った上で8月1日、離婚届を提出した。慰謝料などの取り決めもなく、保釈からわずか3日というタイミングでの離婚に、一日も早く戸籍から抜けることを選んだ彼女の心情がうかがえた。
(山川敦司)
1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。