昨年末のNHK紅白に特別枠として出演した、桑田佳祐×佐野元春×世良公則×Char×野口五郎による、全員が1955~56年早生まれによる「同級生バンド」。 この紅白で歌手卒業を宣言した加山雄三へのリスペクトを込め、アコースティックギター演奏「夜空の星」に続き、5月にリリースしたチャリティーソング「時代遅れのRock’n’Roll Band」がテレビで初披露された。往年のファンだけでなく、若い世代にもそのカッコよさが伝わったことだろう。
中でもひときわ目を引いたのが、日本を代表するギタリスト、Charの渋いプレイだった。Charは76年6月、キャニオン・レコードからシングル「NAVY BLUE」でソロ・デビュー。そのビジュアルも手伝い、当時は原田真二、世良公則とともに「ロック御三家」と呼ばれることに。「週刊平凡」や「週刊明星」などのアイドル誌でも表紙を飾る、ジャニーズ真っ青の人気者だった。
だが彼の魅力はなんといっても、トリッキーでありながら技術に裏打ちされた、卓越したギター演奏。それが日本中のギターキッズの関心を集め、一目置かれる存在となっていったのだ。
6歳でピアノ、8歳でギターを始めた彼は、中学に入るとバンドを結成。雑誌「ロッキンf」のインタビューによれば、
「中学3年生の1年間で、グランド・ファンクを全部コピーしたんだ。これだったら弾きながら歌える!みたいな感じだね」(83年2月号)。
高校入学後に、バンド「GAS MASK」を結成。ヤマハのコンテスト等で優勝するなど、めきめきと頭角を現していくことになるが、
「ある時、ヤマハでパーティーがあって、出ているバンド見てたら急にアタマきて、『おまえ、ギターやめろよ』ってステージに上がっちゃった。それでもって2曲ぐらい弾いちゃったんだ」(「ロッキンf」より)
結果、「乗っ取られた」ギタリストはその日を境にギターを辞めてしまい、代わりに高校生だったCharが「スタジオでのスケジュール全て」を担当することになったという逸話も残されている。
そんな彼が73年4月、ベーシストの鳴瀬ヒロ(喜博)から「牛丼」を契約金として加入させられた、というバンドが同年初シングル「すべてがわかる時(Out of Time)」(B面は「ロックンロールをぶっとばせ」/キングレコード)を発売した「BAD SCENE」。メンバーは金子光則(vo)、鳴瀬(b)、長谷川康之(ds)にCharを加えた4人。彼らはプロモーションで各地を回り、日比谷野音などにも出演した。だが、ドラマーの長谷川が毎週土曜日放送の「8時だヨ!全員集合」の熱狂的ファンで、「土曜夜だけは仕事しない!」との理由で解散したという説もある。
そんな「BAD SCENE」をA面B面とも、99年発売のオムニバスCD「ニューロックの夜明け 番外編9」( Pヴァインレコード)で聴くことができる。Charの原点を知る上でも、超貴重な1枚だ。
(山川敦司)