まず気になるのは、ロシアが仕掛けるウクライナ戦争の行方だ。国際ジャーナリストの山田敏弘氏が解説する。
「昨年末、ウクライナのゼレンスキー大統領(44)がアメリカ議会まで行き、7兆円という凄い金額の援助を引き出してきた。ゼレンスキーがロシアと対抗できるのは、アメリカの支援ありきですが、上下議会がねじれている現在、バイデン大統領(80)の思惑通りにはいかないでしょう」(以下、「」内は山田氏)
要はアメリカの動き一つということ。が、現状ではロシア・ウクライナともに戦線が膠着状態にあるのも事実だ。
「プーチン大統領(70)も、現時点では引くことはできず、今年は再び首都キーウへの総攻撃ということもありえます。ただ、お互い水面下では交渉をし、できるだけ早く戦争状態をやめたい。プーチンは口では戦術核も辞さず、みたいなことを言っていますが、実際に使うことはないと見ています」
となると最大級のリスクが減ることになるが‥‥。
「ただし、物事には最悪パターンへの変化もありえます。そのシナリオとはプーチンが軍などの強硬派に押されて、国内での基盤が危うくなった場合です。そうなると、失脚する前に最後の手段、戦術核での攻撃という考えも出てくるかもしれない。これは文字通り最悪の展開で、NATOのレッドラインとなる『生物化学兵器プラス核兵器の使用』を越えてしまう。その場合は絶対に反撃しなくてはいけない。それが泥仕合になれば、本当の意味で欧州から始まる世界大戦になりかねません」
さらに非常事態が連鎖するシナリオも想定される。そのケースとは──。
「アメリカが欧州への軍事介入を行ったとしたら、相対的に東アジアでの軍事的な比重が軽くなる。すると、その隙を狙って中国の習近平国家主席(69)が台湾侵攻に踏み切る可能性がある。さらに玉突きで、北朝鮮が韓国、そして日本への攻撃に踏み切って──」
もちろん想定しうる最悪のケースではあるが、その口火を切るのは北朝鮮による大規模なサイバー攻撃だと分析する。
「一昨年、徳島の病院がランサムウェアによるサイバー攻撃を受けましたが、これはロシアの一民間組織の脅迫(金を要求)でした。これが国家規模でのサイバー攻撃となれば、その被害は甚大です。同じ病院でたとえてみましょう。都内の基幹病院が攻撃を受けて機能マヒに陥れば、命を預けている患者はもちろん、多くの人たちに大変な混乱が生じる。基幹病院などのサイバーセキュリティは高いですが、その周辺、出入り業者などまで含めたら全てが安全とは言えないでしょう」
それこそ1万人単位の被害が出る、原爆投下級の悲惨な展開も想像しうる。
暗い方向ばかりでなく、ひょんなところから状況が変わる展開もあるという。
「それは米トランプ前大統領(76)の動向です。いまだ保守層からのトランプ待望論は強い。彼の最大の武器だったツイッターが永久凍結されていましたが、イーロン・マスクに経営者が変わって解除されました。現在、トランプは自身が立ち上げたメディアのみでしか発信していませんが、無党派層、中間層を取り込むにはツイッターが必要というのを理解している。そのタイミングを計っているのだと思います」
トランプのツイッター復帰がどう世界情勢にかかわるというのだろうか。
「トランプが有力‥‥となってくれば、ロシアはもちろん中国もその様子を見ることが予想されます。トランプは、いわゆる“西側の価値”に拘泥する人物ではない。それがロシアなどの期待を生み、歩み寄りの方向が見えてくる。つまり、カオスをカオスでもって制するワケです」
トランプが救世主? まさにウルトラCだ。