芸能

追悼…高橋幸宏が世に出したのは「テクニック不要の素人集団」だった/日本音楽シーン「名作裏面史」

 80年代にテクノブームを巻き起こした「イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)」のメンバーだったドラマー・高橋幸宏さんが1月14日、脳腫瘍により併発した誤嚥性肺炎で死去したことがわかった。70歳だった。

 YMOは78年、高橋さんと坂本龍一、細野晴臣により結成されたトリオ。翌年から2年連続で世界ツアーを敢行し、83年に「散開」する5年間で、全世界でのレコード売り上げは500万枚以上を記録した。

 そんな高橋さんが82年に、細野とともに「YENレーベル」立ち上げる。その第1弾アーティストとなった立花ハジメが在籍し、YMOとともにテクノブームを牽引したのが「プラスチックス」である。メンバーはグラフィックデザイナーの立花のほか、イラストレーターの中西俊夫、ファッションスタイリストの佐藤チカといったカタカナ職業の面々に、元四人囃子の佐久間正英、作詞家でリズムボックス担当の島武実の5人。

 当初は原宿界隈を根城にする、単なる素人パーティーバンドだったが、佐久間がプロデュースに加わったことで、コンセプトを中西、立花、佐藤という3人中心の「ほぼ素人集団」にスイッチ。結果、テクニックのあるメンバーは必要ないとの理由で、ドラムス担当の大口広司(元テンプターズ)がクビになり、当時大流行したスペースインベーダーの「ボタンを押すのは上手いはず」として、島がリズムボックスに起用されることになったのである。

 だが、当時の音楽シーンを読んだ佐久間の目に、狂いはなかった。演奏者としてはYMOと真逆な「素人」の立場で開き直ったプラスティックスは、YMO以上に「テクノポップ」的な音楽を作り出すことに成功。

 デビュー直後の79年には、イギリスのインディーズレーベル「ラフ・トレード・レコード」からシングル「Copy / Robot」を発売。そして80年1月、日本でのデビュー盤となったのが、日米英独同時リリースの「WELCOME BACK PLASTICS」(ビクターエンタテインメント)だったのである。

 むろんこのアルバムでも、ピコピコと鳴り響くチープなシンセサイザーに、人を小バカにしたような、ぶっきらぼうなチカのヴォーカルは健在。しかしそれが、YMOが切り開いたテクノブームに乗り、日本の音楽シーンを席巻することになるのだ。

 プラスティックスは81年に解散。立花は翌年、YENレーベルから1stアルバム「H」を発売するが、今回の訃報に際し、「PLASTICSになってからは…幸宏ツアーに参加させて貰ったり一緒にロンドンに行ったり…楽しい思い出はキリがない…」とツイートしている。

 YMOとともに日本にテクノブームを定着させたバンド。それが、プラスティックスだったのである。

(山川敦司)

カテゴリー: 芸能   タグ: , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    デキる既婚者は使ってる「Cuddle(カドル)-既婚者専用マッチングアプリ」で異性の相談相手をつくるワザ

    Sponsored

    30〜40代、既婚。会社でも肩書が付き、責任のある仕事を担うようになった。周囲からは「落ち着いた」なんて言われる年頃だが、順調に見える既婚者ほど、仕事のプレッシャーや人間関係のストレスを感じながら、発散の場がないまま毎日を過ごしてはいないだ…

    カテゴリー: 特集|タグ: , |

    これから人気急上昇する旅行先は「カンボジア・シェムリアップ」コスパ抜群の現地事情

    2025年の旅行者の動向を予測した「トラベルトレンドレポート2025」を、世界の航空券やホテルなどを比較検索するスカイスキャナージャパン(東京都港区)が発表した。同社が保有する膨大な検索データと、日本人1000人を含む世界2万人を対象にした…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , |

    コレクター急増で価格高騰「セ・パ12球団プロ野球トミカ」は「つば九郎」が希少だった

    大谷翔平が「40-40」の偉業を達成してから、しばらくが経ちました。メジャーリーグで1シーズン中に40本塁打、40盗塁を達成したのは史上5人目の快挙とのこと、特に野球に詳しくない私のような人間でも、凄いことだというのはわかります。ところで、…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , |

注目キーワード

人気記事

1
「反大谷翔平」の上原浩治に「直球質問」をぶつけたら返ってきた「絵文字」が…
2
東京ドームで観客半分の「プレミア12」にサッカーファンが「シラケる」挑発バトル
3
なんだこりゃ!岡田将生の電撃結婚を「完全スルー」した「めざましテレビ」の担当は元カノ鈴木唯アナ
4
「メジャー挑戦」佐々木朗希はドジャース入りでなく千賀滉大や前田健太のように孤軍奮闘せよ
5
大谷翔平「MVP受賞映像」で「真美子夫人の妊娠説」が噴出したワケ