交流戦の連覇を飾った巨人が、リーグ戦も勢いよく再スタートしました。このまま他球団を引き離してしまうのでしょうか。
鍵を握るのはチームの顔である阿部の打撃です。6月を終えた時点での成績は打率2割3分7厘、7本塁打、28打点で、打率はリーグの規定打席到達者ワーストに低迷しています。
開幕前に首を痛めてフォームのバランスを崩したことが不振の原因と自己分析しているようです。私はバッティングでいちばん大事なのは首と考えていますから、阿部の今の成績も納得できる話です。首の故障はプロ野球選手にとって致命傷になりかねないのです。首をまっすぐ立てれば、背骨はまっすぐになる。逆に首が曲がると、背骨も曲がり、体の軸がぶれてしまいます。でんでん太鼓のようにバットを振る軸回転のスイングは首から始まっているのです。
私は、阿部の不振にはもう一つの理由、大きくしすぎた体にもあると見ています。プロフィールでは身長180センチ、97キロとなっています。あれだけの大きな体ですから、シーズン序盤は切れがなく、元来が夏場以降に調子を上げるスロースターターです。今年の場合は首という大事な部位を痛めてバランスを崩したことで、例年以上に大きく出遅れたのではないでしょうか。あの巨体で軸がぶれると、普通の選手以上に打撃が崩れてしまいます。
では、体重を落とせば復調するのかというと、それほど簡単な話ではありません。体重を落とすとパワーがなくなります。打球の飛距離は体重が減った分だけ落ちるのです。
先日、ソフトバンクの松中と二軍の試合前のグラウンドで打撃論を交わす機会がありました。三冠王の経験がある彼も、体重と飛距離の関係を力説していました。体重が100キロあった当時はおもしろいように打球が飛んだというのです。
確かに体重は打者にとって大きな武器になります。重さ=パワーです。ですが、重さは諸刃の剣でもある。不自然に体重を増やすと体はいずれ悲鳴を上げます。若い頃は筋肉の柔軟さや関節の柔らかさで釣り合いが取れていても、年を取るとバランスが崩れてケガにつながります。特に負担がかかるのが膝。前述の松中も膝を痛めた一人ですが、清原や城島、最近では西武の中村もそう。大きすぎる体は、どうしてもケガが多くなってしまうのです。
私も現役時代、体重には敏感でした。朝起きてから体重計に乗ると、試合前、試合後、寝る前にも量ります。私の場合は三塁というポジションで、体重が80キロを超えると足に負担がかかり、ケガにつながると自覚していました。ですから、80キロをオーバーしないよう、76~78キロの間を行ったり来たりしていました。
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