昨年3月に起きたSMBC日興証券の株価操縦事件は、大きな話題となった。逮捕・起訴された全員が犯行を否認しており、現在は裁判を待っている状況である。
一般人にとっては馴染みが薄い逮捕容疑の株価操縦とは「取引を誘引する目的で有価証券売買等が繁盛であると誤解させ(中略)相場を変動させるべき一連の有価証券売買等又はその申し込み、委託等若しくは受託等をすること」(金融商品取引法第159条第2項)とされる。SMBC日興証券は大株主の株価を安定させるために「ブロックオファー取引」を組織ぐるみで行っていたとみられている。
ブロックオファー取引とは、証券会社が取引所の立会時間外に株主から大量の株式を買い取り、投資家に売却する取引のことで、証券会社は終値を基準に決めた買い取り価格と売却価格の差額を、利益として得る。株主にとっては一度に大量の株式を売却でき、投資家は手数料を支払わずに取得できるメリットがある。
ブロックオファー自体は法律違反ではないが、SMBC日興証券では部門間で情報を共有し、売買を行っていたことが悪質だとされている。これはいわゆる安定操作取引とされ、法令を遵守し申告されものを除いて、相場操縦行為の一類型として禁止されているものだ。このことに対し、起訴された者たちは関与を否定し続けている。
「まだ裁判の日程も決まっていませんが、検察側が相場操縦での裁判を勝ち切れるかどうかは微妙だと、記者たちは感じています。要は、誰が被害を受けたのか、利益を得たのかを立証できない可能性があるからです。証券会社は監督官庁である金融庁に逆らうことはできませんが、起訴されたトレーダーたちは会社を解雇されて(正確には年単位の契約更新をされなかった)個人として争うことになるわけですから、遠慮なく持論を展開していくことでしょう。となると、無罪の可能性も捨てきれません」(全国紙司法担当記者)
だがここで、とんでもない事実が判明するのだ。(つづく)