元衆院議員の宮崎謙介氏が足掛け5年の議員生活の経験をもとに、政治家ウオッチングやオフレコ話、政治にまつわる話を適度な塩梅で、わかりやすく「濃口政治評論家」として直言!
世界の対中国包囲網が拡大の一途をたどる中、永田町ではその包囲網がシンクロして、親中派代表格である二階俊博幹事長にも、ふたつの包囲網ができつつあります。はい、二階幹事長に「緊急事態宣言」の発令です。
まずひとつ目の包囲網は「世界が中国を疎う」ように、永田町の若手議員が二階幹事長をうっとうしく思い始めたというのです。それもそうですよね。近年の自民党の政治とカネ問題、これは本当に情けない。
IR汚職逮捕の秋元司議員、大型買収事件の河井克行・案里夫妻に続いて、菅原一秀氏も公選法違反で略式起訴されました。先日のお金問題に対する会見では「ずいぶん政治とカネの問題はキレイになってきている」と二階幹事長が発言しましたが、とある若手議員がアキレ返って言うには、
「こんな渦中にいながら、もうナニ言っちゃってんの。まるで中国が『新型コロナウイルスは武漢発ではないし、なんなら中国のコロナは随分とキレイになってきている』と言うようなもんだよ」
これは今に始まったことではないのですが、「ボチボチ現役を引退して、余生を楽しんでほしい」という悲痛な声が、永田町では聞こえてきています。
しかし、実はこうした声はブロックされていて、当の本人には届いていません。というのは、今の自民党には二階幹事長がいないと困るため「何がなんでも本人には聞かせないぞ!」と、二階氏のそばでわーっわーっと騒いで、絶対に耳に入れるものかと動く幹部たちがいるからです。これがふたつ目の包囲網であり、守る側の網なのです。
では、なぜに二階幹事長がいないと困るのか。ポイントは、現在の「大陸」に顔が利くのは二階幹事長しかいないという点です。
先進各国のほとんどの政治家は中国嫌いである、と考えます。そもそも中国自体、自由主義陣営の多くの国々と対立し始めていますし、バイデン政権はトランプ前大統領の厳しい対中姿勢を軌道修正するどころか、むしろ露骨に中国を敵視し始めています。それが世界の対中国包囲網拡大へとつながっているのでしょう。
が、嫌いな上司でもなんとかうまくやっていかないといけないように、ファイティングポーズ一辺倒でいけば、中国からのしっぺ返しを食らうのがオチ。名実ともに中国が最大の経済取引相手となった日本は、冷え込んでしまうでしょう。まさに二階幹事長と中国は、「嫌われ対立」「やっかいでも不可欠」というふたつの点でニアリーです。
中国が世界中から、そして二階幹事長が若手議員からヒンシュクを買っていることは否めませんが、ベテラン議員がここにきて、次期衆院選に出馬しない宣言を出し始めた今、こんなことを囁く若手も現れ始めました。
「よくよく考えると、大陸だけでなく、日本の各省庁や多くの業界団体に顔が利く。しかも、野党ともスムーズに話ができる二階幹事長は、やっぱり自民党にいないと困る」
とはいえ、そもそも若手と幹部の狭間にいる当のご本人は、知らぬが仏。
秋に予想される解散総選挙、どちらの包囲網が破られるのでしょうか。というか、自民党はこのままで大丈夫なのか!?
宮崎謙介(みやざき・けんすけ):1981年生まれ、東京都出身。早稲田大学を卒業後、日本生命などを経て12年に国会議員に。16年に辞職し、経営コンサルタント。6月30日に著書「国会議員を経験して学んだ実生活に即活かせる政治利用の件。」(徳間書店)を上梓。